そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

新たな取り組みで
時代に合わせて進化する店

 『鵠沼海岸 蕎麦兄』(くげぬまかいがんそばにい)は、サーフィンが趣味だという嶋田佳樹さんが、神奈川県藤沢市・鵠沼海岸近くにオープンした店だ。もともと、嶋田さんの父親・嶋田昌治さんが1970(昭和45)年に東京都・大森で『嶋田屋』として開店、1977(昭和52)年に藤沢市内・長後駅近くに移転し『嶋田庵』に改称し40年ほど営業、その後2018(平成30)年に現在地に移転し、新たなスタートを切った。

住宅に囲まれるような立地の『鵠沼海岸 蕎麦兄』。店内も海辺の景色にマッチした造り。店主の個性が表現されている。
お客様の目の前で揚げる天ぷらが好評の「天せいろ」。調理の様子が見えることで、期待が膨らむ。
 嶋田さんは、「移転してお客様も9割方入れ替わりました。以前の国道沿いの立地と変わり、住宅街の中です。客層は近隣の住民の方が多く、地元の方を大切にしています。店名はサーフィンの仲間から「蕎麦屋の兄貴」という意味で呼ばれていたあだ名からつけました」と話す。店の周囲は飲食店もほとんどなく、お客様の口コミなどで店の評判が伝わっている。
 店の造りも、のれんの「蕎麦」の文字がなければ海辺の洒落たカフェレストランのように見える。店内に入るとオープンキッチンとカウンター席、リアルタイムで鵠沼海岸の様子が映るモニターが設置されている。オープンキッチンは客席からほとんどが見える造りになっていて、天ぷら専門店のように天ぷらを揚げている様子も見ることができる。2階には半個室でも利用できる客席も備えている。
「鎌倉山納豆そば」は、納豆・温泉玉子・とろろ・大根おろしなど具だくさんで、ヘルシーながらボリュームもある一品。
スチームコンベクションオーブンを使用して作る「鴨ロース」は、味付けにそばつゆを使用している。しっとりとした食感に仕上がっている。
自家製の「そば茶プリン」は、デザートとして好評だ。テイクアウトにも対応し、専用のステッカーも用意する。
 『鵠沼海岸 蕎麦兄』は、店の場所と屋号、造りを変えただけではなく、メニューも見直し、そばとつゆも抜本的に改革した。電動石臼製粉機を導入し、そば粉は全量自家製粉にした。挽きたてのそば粉は香りが強い。風味が増したそばに合わせるようにつゆの味も変更した。また、当地では昼間から飲酒需要が高く、それに応えるべく酒類・酒肴の充実も図った。定番の酒肴に加え、「鴨ロース」「鶏のコンフィ」「牛すじ大根」「鶏レバーのオイル漬け」など、ひと工夫した品が揃う。
 常時提供の麺類は冷たいもの9種、温かいもの8種とかなり絞り込んでいると思うが、嶋田さんは、まだ多いという。他に季節毎の品を数種類提供する。セットメニューは提供していないが、現在は昼時のランチセットのみ提供している。
 常に次の展開を考えながら、営業する嶋田さんの原動力になっているのは研究熱心さだ。組合関係の勉強会等にも積極的に参加、繁盛店の食べ歩きも欠かせない。「今年の3月でオープンして丸2年になります。メニューや味もお客様の意見も聞きながらステップアップさせたいと考えています」という。父親・昌治さんが始めた店から今年で50年。来店する度に変化が期待できる楽しみな店だ。
<店舗ホームページ>https://sobanii.com/

鵠沼海岸 蕎麦兄

神奈川県藤沢市鵠沼海岸4-8-11

0466-53-7512