歴史ある名湯の温泉街で
大正時代から受け継がれる味
今年3月に北陸新幹線が延伸開業した小松駅から車で20分ほどの場所にある粟津温泉は泰澄大師が発見したと言われ、1300 年以上の歴史を持つ歴史ある温泉として知られている。この温泉街の中に店を構える『銀なべ食堂』は、初代・宮本真次さんが大正時代に創業、創業時は『宮本食堂』という屋号であったが、2代目・宮本真一朗さんの代に移転したのを契機として『銀なべ食堂』の屋号にした。3代目で現主人の宮本和日朗さんは「店名の由来は定かではないのですが、金だと完成されてしまっているので、まだ先がある銀にしたのかと思っていますが、はっきりとしたことはわかりません」と話す。
店には地元の方、温泉を訪れた方など様々なお客様が来店される。それゆえにメニューも麺類、丼物、定食、酒肴など豊富だ。小松市は歌舞伎「勧進帳」と舞台となった「安宅の関」があることで知られ、源頼朝に追われた源義経が武蔵坊弁慶とともに関を突破するシーンは歌舞伎の名場面として知られている。これをモチーフに創作した「弁慶そば」は、澄んだあっさりとした出汁とそばに、別皿で提供される7種類の具材を愉しむことができる名物そばだ。麺類ではまろやかな味わいの「カレーうどん」も好評を得ている。丼物、定食では「カツ丼」やおかずが入れ替わる「日替り定食」などが売れ筋になっている。
店自体は創業100 年を超える老舗だが、堅苦しさがなく、代々受け継がれてきた味を気兼ねなく味わうことができる。手作りの味わいも格別だ。温泉街という立地ゆえ、閉店は22時と遅めにしている。時勢柄、外国人観光客も増えてきた。支払いはキャッシュレスに対応しており、現在では3割ほどがキャッシュレス決済だという。1300 年という歴史ある名湯の街で100 年以上にわたり受け継がれてきた伝統の味は、多くのファンをひきつけることがよくわかる。