そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

素材へのこだわりが
国境を越えて理解される

 『蕎麦処いわを』が店を構える京都・嵐山は京都市内有数の観光スポットで、平日でも客足が絶えない。取材時も多くの観光客、特に外国人観光客でにぎわっていた。
 「外国人観光客の方は目に見えて増えています。従来、冬場は閑散期だったのですが、近年はその時期でも外国人の方が増えて、半数以上になります」と話すのは、3代目店主・岩尾孝太郎さんだ。

店舗内外の様子。築10年の新しい建物だが、周囲の風景を壊さない町家風の外観になっている。
京かまぼこ茨木屋の「板かまぼこ」、半兵衛麩の「切板麩」「ゆば」といった地元の食材を使った「京しっぽく」。
 『蕎麦処いわを』は、福井県出身の岩尾さんの祖父・岩尾民二郎さんが、1962(昭和37)に創業した。創業当時は食堂的な営業だったが、大学卒業後、東京のシステム開発会社に勤務していた岩尾さんが店に戻って父親・岩尾勝治さんの後を継ぎ、2009(平成21)に現在の店舗に建て替えてから、そばの専門的として営業するようになった。「もともと麺類に力を入れていたので、自家製麺にしたい、特にそばが好きだったので、思い切ってそば専門店にしました」という。
冷たいそばは二八で打つ。写真の「ざる」の他「冷しにしん」「えび天ざる」がある。
外国人観光客にも人気の「えび天ぷら」。日本食の代名詞でもある天ぷらを食べたい方は多いという。
えび天を出汁の効いた玉子で半熟に閉じた「天とじ丼」。「京赤地どり」を使った「親子丼」も人気がある。
 岩尾さんは素材へのこだわりを大切にしている。そば粉は国産の石臼挽き、冷たいそばと温かいそばは打ち分けている。また、京都は出汁の文化だけに、出汁の材料も吟味し、節類はかつお節、宗田(目近)節、うるめ節、さば節を配合する。特に昆布は利尻産の最上級のものを使用する。井戸からくみ上げた軟水の水が出汁の味を引き立てる。『蕎麦処いわを』の出汁はお客様にも好評で、今年の3月から家庭でも使用できる特注の出汁パックを制作・販売するようになった。
 メニューも店舗改装とともに絞り込み、昼だけの営業なので回転数を上げるよう経営努力をしている。42席のテーブルは、2人掛けも多く、案内する順番を考えてできるだけ席のロスを減らすようにもしている。「外国人観光客の方は比較的単価の高いものを注文する傾向があり、客単価の向上にもつながっています。やはり「天ぷらそば」「天とじそば」など、天ぷらは人気があります。代表的な日本食が食べられるというのも、外国人の方にとっては良いのかもしれません」と岩尾さんは話す。外国語メニューは英語・中国語・韓国語を用意し、全て写真入り、従業員が英語で対応するなど、インバウンド対応が功を奏している。今後は、カード会社の決済手数料を検討しながら、キャッシュレス対応も行いたいと考えている。
<店舗ホームページ>http://www.kyoto-iwawo.co.jp/

蕎麦処 いわを

京都府京都市右京区嵯峨天龍寺造路町19

075-861-3853