そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

修業で得た手打ちの技で
お客様の心をつかむ

『江戸そば八助』の店主・渡邉晃匡さんは、東京都内の手打ちそば店で8年間修業後、2017(平成29年)に当地で店を開いた。渡邊さんは「この建物はもともとそば店だったもので、厨房は新設しました。打ち場は再利用しています」と話す。打ち場には石臼も設置し、自家製紛も行う本格的な手打ちそばだ。静岡県藤枝市出身の渡邊さんは、東京都内や静岡市内での開店も考えて物件を探したが、現在の店が一番良いと考え、当地での開店となった。

『江戸そば 八助』の店舗内外観。元そば店の建物を活かし、打ち場は再利用している。客席から見える坪庭の雰囲気も良い。
 開店当初は集客が伸びず、苦労した時期もあったが、しっかりと基礎を学んだ渡邊さんが打つ手打ちそばはお客様に認められ、来客数も増えた。客層は幅広く、平日はビジネスパーソン、週末は家族連れなどが多い。女性客も少なくない。『江戸そば八助』が、年齢や性別を問わず支持されていることがわかる。
 女性客が比較的多いというのは、店の造作や清潔感がある店内はもちろん、器使いや盛り付けを見るとうなずける。器や薬味入れなどもデザイン性の高いものを使用し、丁寧でセンスのある盛り付けも目を引く。これは8年にわたり修業を積んだ、渡邊さんの努力が現れているといえる。見た目でもお客様に期待感を抱かせるのだ。
 二八で打ち、すっきりとしたつゆで味わうそばはまさに店名の通り「江戸そば」の流れを汲むものだ。そのそばを活かした様々な品書きが揃う。定番の「天せいろ」や「鴨せいろ」などに加えて、鴨の出汁を加えたつゆに野菜が多く入る「野菜汁せいろ」や、ぶっかけスタイルの「揚げ茄子」「冷や梅」などは、見た目にもインパクトがある一品だ。冬場は温かいそばも良く出るという。厚切りの鴨を使用する「鴨なんばん」は、宮城県産の蔵王深山竹炭水鴨を使用。火を入れても硬くならず、味わいが良い。当初はそば一本で勝負したいと、うどんは置かなかったが、家族連れのお客様の子供がそばが食べられないことなどがあり「お子様うどん」を提供するようにした。「小天丼」「鳥の親子天丼」といったご飯ものも提供しているが、『江戸そば八助』の主役あくまでもそばだ。
ナス・ハス・ピーマン・ネギを鴨の出汁を加えたつゆで味わう「野菜汁せいろ」。
「揚げ茄子」は、素揚げのナスに薬味がたっぷりと乗る。器や盛り付けも目を引く。
七味の他に山椒も合う「鴨なんばん」。厚切りの鴨肉は柔らかく、つゆとの相性 も抜群だ。
 経営上難しい点を尋ねると、夜の集客だという。当地では、そば店で一杯飲む習慣は少なく、そうした習慣を打破しようと、酒類や酒肴も揃えているものの、なかなか定着せず、夜も食事中心だ。今後は、そば店ならではの酒肴で一杯楽しみ、本格手打ちそばで締める、『江戸そば八助』がその発信元となることを期待したい。

江戸そば 八助

静岡県焼津市柳新屋601-3

054-637-9240