名物「とりそば」と
武生発祥の「越前おろしそば」
福井県越前市、武生商工会議所の裏に店を構える『本手打そば 山楽』は、平成12年に開店した比較的新しいそば店だ。店主・金子康幸さんの実家は、同じ越前市内のそば店で、営業地域が重ならないように当地で開店したという。
「越前そば」の名称は、良く知られているように、1947(昭和22)年に昭和天皇が福井県を行幸した際に食べたそばの味に感銘を受けたことをきっかけに広まったといわれている。
『本手打ちそば 山楽』でもスタンダードな「おろしそば」や「天おろしそば」は定番の品として並ぶ。手打ちで太めの食べ応えのあるそばだ。おろしそばのつゆには出汁を加えず、青首大根の大根おろしと生醤油のみで提供する。大根の辛味が季節によって異なるので、季節毎に違う味わいになる。夏は辛味が強く、冬は甘味が強くなる。
しかし、『本手打ちそば 山楽』には、他の店にはない独特のメニューがある。それが「とりそば」だ。具材として盛り付けられる鶏肉でボリューム感もある。構成は至ってシンプルだが、そのシンプルさゆえに素材の味がそのまま出る。薬味にコショウが合うのも特徴的だ。
「地元の情報誌に掲載されたのがきっかけになり、その後も様々なマスメディアに取り上げられました。おかげ様で昼でも官庁関係や会社関係の接待の予約が入るようになり、県外からわざわざ「とりそば」を食べに来ていただくお客様もいます。「とりそば」と「天おろしそば」が店の看板商品で、注文も集中します。チェーン店などとの競合が激しい中、個人店は特色のある商品を提供して、お客様がそれを目指して足を運んでいただけるようにしないといけないと考えています」と金子さんは話す。
2023(令和5)年春の金沢-敦賀間の開業を目指し、北陸新幹線の工事が進む。『本手打ちそば 山楽』の近くには新たに「南越駅」(仮称)が設置され、北陸自動車道鯖江IC・武生ICの中間にある『本手打ちそば 山楽』の交通アクセスはさらに向上する。「行政にも「おろしそば」発祥の地をもっとPRしてほしいと要請しています。支部では年に2回イベントに出店もしています。新幹線が開業するまでにはぜひ定着させたいと思います」と、自店のみならず、武生のそば文化の啓蒙にも力を入れる。