だしにこだわり
オリジナリティーを演出
観光、修学旅行、ビジネスと、コロナ前の賑わいが戻りつつある古都・金沢。駅の周囲や観光名所を離れると、静かな場所も多い。そうした場所で、地域密着の営業を70年にわたり続けてきたのが『大黒屋』だ。
店主・東川敏行さんは「父(東川敏夫さん)は戦前商社で経理の仕事をしていて、戦後復員した時に仕事を失い、義理のきょうだいが経営していた『大黒屋食堂』で働いた後、支店として店を始めました」と話す。東川さん自身は若い頃、店を継ぐ考えはなく、東京の大学に入学、商社で働くことを夢みていたが、兄が早逝し、学生時代に海外を旅行する中で、自身の家業を見直し、店を継ぐことになった。
『大黒屋』のセールスポイントはだしへのこだわりだ。先代の時から材料を吟味し、手間をかけただしにこだわってきた。それが『大黒屋』の味を作り出す源泉だ。節は4種類使用し、雑味の出る部分を丁寧に取り除き、蒸して、削って使用する。この節を使って取っただしに地元の醤油を使い味付けをする。東川さんはこだわりのだしをベースに、店名の大黒にちなんで七福神の名前を付けた『大黒』『えびす』『弁天』『毘沙門』や、げそのかき揚げを使った『荒磯』などオリジナリティあふれるメニューを開発してきた。麺類に限らず、『天むす丼』など、丼物も特色のある品が数多く品書きに並ぶ。東川さんは「父は経理の仕事をしていたこともあって細かい性格なんですね。だから節も余分な部分を丁寧に削っていたのです。私もそれを受け継いで続けています。オリジナルメニューは毎日来るお客様が飽きないようにとも思い、考えました」と話す。
そして『大黒屋』が受け継ぐ伝統の味が元祖「金沢カレー」の味だ。チェーン店もあり、全国的にも知名度があるが、『大黒屋』の本店にあたる『大黒屋食堂』の2代目店主が「金沢カレー」発祥の店で修行していた事もあり、『大黒屋』では元祖の味を受け継いでいるのだ。カレーをだしで割らずにそのままかける形で、黒めの色とまろやかな味わいが特徴になっている。東川さんはカレーうどんをアレンジし、愛知県の「味噌煮込みうどん」をヒントに「カレー鍋うどん」を作り出し、提供している。
手間をかけただしをベースにした様々な創作メニューと、元祖の味を受け継ぐ「金沢カレー」、気取らない『大黒屋』の安心感のある味が、地元のお客様をひきつける要因だろう。
<店舗ホームページ>
http://www.spacelan.ne.jp/~daiko98