郷土料理「おっきりこみ」と
店の名物メニュー「箱そば」
藤岡市内の国道沿いに店を構える『大村』は、店主・髙栁裕一さんが、富岡市の『大村』で修業後に独立・開業し、今年で36年目を迎える店だ。開業当初はバブル景気に沸いた時期だった。髙栁さんは「店を開ければお客様が来る、そんな時代でした。当時は父も手伝ってくれていたので、出前もしていました。その後バブルが崩壊し、都会と違って急激に影響はなく、徐々に影響が出てきました」と話す。また、上信越自動車道開通前には軽井沢などへの観光客が立ち寄ってくれていたが、開通後はそうした需要が減少するなど大きな影響を受けた。
不景気の時代が続いても、店を維持してきてこれたのは、髙栁さんの地道な努力があってこそだ。時代の変化に合せたメニューの絞り込みや、組合・青年会活動を通じて得た知識を店舗経営に積極的に活かすなど、様々な取り組みを行ってきた。取材時は11月下旬であったが、既に年越しそばの予約も開始しており、これも同業の仲間が実践していることを学んで取り入れたという。
お客様にも好評を得ている、店の名物「箱そば」をはじめ、「ソースカツ丼セット」など、県外からも『大村』の味を求めて来店されるお客様も多い。平日と比較して週末や休日は来客数が多く、2倍くらいになる。最近はインターネットやSNSで情報を得たとみられるお客様が多く、開店前から待っている方もいるほどだ。また、冬の時期になると群馬県の郷土料理でもある「おっきりこみ」を提供している。「おっきりこみ」は幅広のうどんを、肉や野菜と煮込んだものだ。『大村』では、上州地鶏に人参・大根・白菜・長葱・青菜・里芋が入る具だくさんの「おっきりこみ」になっている。醤油味の他に県内産の味噌を使った味噌味や、カレー味も提供している。寒い季節にはぴったりの一品だ。
現在、店には息子・裕康さんが入り、後継者として店を支える。最近の経営上の悩みは人手不足で、パート・アルバイトを募集してもなかなか応募がないのが悩みだという。昨年は原材料費高騰にともない、価格改定も行うなど、経営上の懸念材料は尽きないが、良き後継者を得て、創業50周年へ向けて親子で力を合わせて乗り切ってゆけることだろう。