普段使いに変化を与える
オリジナリティと専門店の味
『そば処 味の花園』は、一言で言えば地域密着の普段使いの店だ。店のある北海道函館市は観光都市であり、朝市や五稜郭などに多くの観光客が訪れる。しかし、当店はそうした観光地とは反対側に位置し、客層のほとんどは地元のお客様だ。
2代目現店主・工藤良則さんの父親、工藤竹則さんが明治時代創業の老舗『丸南 本店』で修行後、1966(昭和41)年に当地で創業した。その後4回にわたり店舗を建て替え、現店舗は1996(平成8)年に完成した。
工藤さんが「うちはメニューが多いです。地元のお客様中心だから量も結構あります」と話す通り、そば・うどん・ラーメン、セットメニューや4種類のランチセットなど、品数はとても多い。
地元のお客様を飽きさせない『そば処 味の花園』の秘訣は品数の多さだけではない。それはオリジナルメニューと本格手打ちそばだ。
オリジナルメニューのページを見ると、ユニークなネーミングの品が並ぶ。「赤いたぬき」(小海老入りの揚げ玉)、「みどりのたぬき」(青のり入りの揚げ玉)、「黄金(こがね)そば」、「笹カマ天そば」など、工藤さんが一工夫こらした品々だ。「笹カマ天そば」は、東日本大震災の復興支援として始めたメニューで、宮城県産の笹かまぼこを天ぷらにしている。1食につき100円を被災地に寄付する、社会貢献を兼ねた一品になっている。オリジナルメニューといっても、奇をてらうわけではなく、基本的な部分をしっかりと抑えているので、物珍しいだけではない。
そして、工藤さんが自信をもって提供する品が、道内蘭越町産のそば粉を使用した手打ちそばだ。数量限定で手打ちする二八そばは、「もり」の他5種類で提供している。日によって出る数は変わるものの、そば好きのお客様に好評を得ている。
「手打ちそばを出すようになったのは、青年会の企画で子供にそば打ちを教えたことがあり、その際に自分も手打ちの技術を勉強したのがきっかでした。勉強するうちに店でも出してみたいと思うようになり、10年ほど前からメニューに加えました。蘭越産のそば粉の質も良いし、自信をもって提供できる一品です」という。
気軽に来店できる日常の中に垣間見えるオリジナリティと専門店の味こそが、『そば処 味の花園』の強みである。