老舗で味わう
熊本県産のそば
熊本において、先月号で紹介した『肥後名代手打 生蕎麦 井上』に次ぐ歴史を有する『名代肥後そば 政木屋』は、1873(明治6)年創業、そば店を始める前は染物業などを営んでいたというから、商家としての歴史はさらに古い。主な顧客は武士だったが、明治維新をきっかけとして、5代目・正木讓さんの高祖母・正木喜登さんが得意のそば打ちを活かしてそば店を開業したのがそば店としての歴史の始まりだ。
1893(明治26)年には、当時の陸軍第六師団長・北白川宮能久親王殿下が熊本の陸軍施設・偕行社に滞在した際に、そばを献上した。その際の記録が店に掲げられている「餘栄」(身に余る光栄)という書だ。2代目・正木久太郎氏が、皇族にそばを献上した喜びを、書の上手な知人に頼んで書いてもらったという。
店の前を走る市電の敷設と道路拡張で1926(昭和元)年に店の大きさが半分になり、1991(平成3)年に現店舗に建て替えた。現在も通りに面した角地に立地しており、遠くからでも良くわかる。