伝統食と融合した
店独自のカレー煮込み
「祖父(菰田勇さん)が店を始めた時の屋号は『岩美屋』でしたが、1969(昭和44)年に移転した際に父(菰田勝好さん)が『勝美屋』にしました」と話すのは、名古屋市東区に店を構える『勝美屋』の3代目・菰田好典さんだ。勇さんは渥美半島、現在の田原市の出身で、1937(昭和12)年に名古屋市に出て店を始めた。戦時中は一時休業したものの、店舗は戦災を免れた。現在の店舗は1996(平成8)年に再移転した際に建てたものだ。
手打ちを基本としながらも、機械も活用し、うどん・煮込み・きしめん・そばの4種類の麺を仕込む。煮込みうどんの麺は比較的細く、柔らかめに仕上げている。場所柄、うどんの方が割合が多いように感じるが、北海道幌加内町産のそば粉を使うそばも支持されている。夏場は「納豆そば」などのそばのメニューが良く出るが、これから寒い時期になると鍋物の季節となる。
定番のみそ煮込みは「和牛ホルモン入りみそ煮込み」や「カキ入りみその煮込み」などバリエーションも豊富だ。そして『勝美屋』の看板メニューといえるのがカレーを使った各種商品である。「カレーうどん」はもちろんだが、とんかつを1枚のせた「カツカレーうどん」は見た目のインパクトも抜群で、SNSでも投稿が多い。そして、組合の事業で製作した「彩り野菜のカレー煮込み」は、ご当地グルメである「みそ煮込みうどん」と『勝美屋』のカレーが融合したヒット商品といえる。子供も喜んで食べるというまろやかなカレーと煮込みうどんの麺がよく絡み、熱々のまま食べることができる。トマトとブロッコリーの色合いも目を引く。他にも温かいカレーに冷たいうどんを合わせた「カレーころうどん」「カレーせいろ」も提供している。
菰田さんは「店の周りは大きな会社などもあったのですが、今はマンションが増えました。もともと定休日は日曜日・祝日でしたが、子育ても一段落し、週末の方がお客様も多いので今は定休日は水曜日にしています」と、店を取り巻く環境の変化を話してくれた。今でも周辺には会社も多く、平日は周囲で働く方の昼食需要が多い。丼物にはミニうどん・そば・きしめんが付き、麺類と稲荷寿司をセットにした「花定食」、麺類と唐揚げとご飯を付けた定食など、専門店の味とボリュームを両立するメニューが並ぶ。
新たな看板商品と伝統の味を受け継ぎながら3代にわたってその味を守ってきた『勝美屋』。創業90周年までもうすぐだ