そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

手打ちにこだわった
父の想いを大切に

 名鉄瀬戸線・尾張瀬戸駅から瀬戸川沿いには地域特産の瀬戸焼関係の会社が並ぶ。駅から10分ほどの場所に店を構える『賀登光本店』は1917(大正6)年創業の老舗麺類店だ。現在の店主・佐野敬徳さんは4代目になる。佐野さんは「創業者の名前と、妻の実家の料亭の名前から店名をつけたそうです。瀬戸焼関係の会社は最盛期より少なくなりましたが、最近はトヨタ自動車に勤める方の家族など、若いお客様が増えてきました。特に娘がやってくれている、インスタグラムの影響が大きいですね。3年間でフォロワーが1,800人になりました」と話す。SNSの影響は相当にあり、SNSに掲載された情報をもとにTV・雑誌・新聞などが取材に来るというから、PR効果は計り知れない。

『賀登光本店』の店舗内外観。手打ちを大事にしているだけに、手打ち場を客席から見ることができる。
  『賀登光本店』の売れ筋は単品の麺類に+300円でセットにできる定食だ。「ご飯」または「五目飯」のいずれかの他に、「おでん(2本)」「冷やっこ」「野菜の天ぷら」「いわしのフライ」「お刺身」のいずれかのおかずを選ぶことができる。地域柄、麺類とご飯を一緒に注文することが多い上に、手作りのおかずが付くからうれしい。単品の麺類も定番の品の他に「スタミナコロうどん」「スタミナ味噌煮込み」など変わり種もある。
 そして、10月頃から翌年のゴールデンウィーク頃まで提供される「芋うどん」「芋そば」は、『賀登光本店』伝統の季節商品だ。自然薯を使い、家族・従業員が泥を落としてきれいにし、芋をすり、味付けをするところまで分担して行っており、皆の力を集結して完成する逸品といえる。佐野さんの母親・佐野信子さんも仕込みを手伝い、伝統の味を伝えている。もともとは地元の方が売りにきた自然薯を使う方法として考案されたメニューである。自然薯独特の味の濃さと出汁が混ざりあい、絶妙の味わいを醸し出している。
家族・従業員が協力し、手間をかけて仕込む自然薯を使う「芋うどん」は『賀登光本店』の秋から春にかけての看板商品といえる。
定番の「味噌煮込み」をアレンジした「スタミナ味噌煮込み」の定食。味噌煮込みは東海地方では季節を問わず食べられているが、寒い時期には格別だ。
すき焼き風の煮込みうどん「うどんすき」は単品でもボリュームがあり、冬の人気商品だ。
 佐野さんが店を継ぎ、営業をしてきた中で大切にしてきたことは父親・佐野喜多蔵さんが「手打ちができないならうどん屋をやる意味がない」という一言だ。佐野さんはこの言葉だけは裏切ることができないという。「手打ちのうどんを提供することが店の歴史だと思いますし、父親の言葉は忘れることができません。手打ちだから、日によって出来上がりに変化がありますが、会心の出来という日にはとてもうれしい気持ちになります」と話す佐野さん、父から店を受け継ぎ、手打ちにこだわったその想いを実直に受け継いでいることが、『賀登光本店』の味を支えているのだ。
<店舗インスタグラム>https://www.instagram.com/kadomitsu_seto/

加登光本店

愛知県瀬戸市刎田町5

0561-82-2539