そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

学生のお腹を満たす
一息つける店

 近鉄名古屋線・江戸橋駅から歩いて10分ほどの場所にある『八百音』(やおおと)は、すぐ近くに三重大学のキャンパスや、医学部附属病院が立地し、1973(昭和48)年の開店以来、三重大学の学生など関係者に愛されてきた店だ。
 創業者で店主の寺村貞一さんは、滋賀県の出身で、子供の頃に津市に転居、中学校卒業後に親戚が三重県庁近くで営んでいた『八百音』に入店して修業を積んだ。
 「中学校を出て、特別にやりたいこともなかったところ、叔父から自分の店で働くように言われたことで働くようになり、その後独立して今の店の近くで創業しました。2001(平成13)年に移転して、新店舗となりました。最盛期は『八百音』は7店舗あったのですが、現在はこの店だけになりました」と寺村さんは話す。今の店は2代目・寺村公一さんが中心となり、公一さん夫婦と禎一さん夫婦の家族4人での営業だ。以前は出前も多かったが、人手の問題もあり、現在は忙しくない時間に近くだけ注文を受けている。

『八百音』の店舗内外観。壁に掲げられている品書きは創業当時から使用しているもので、半世紀を超える店の歴史を感じる。
カツ煮とご飯を別々にして、うどんが付く「バラカツセット」は、『八百音』売れ筋のトンカツを使ったメニューの中でも人気商品。
 お客様の中心が学生ということもあり、ボリュームがある品が好まれる。『八百音』の売れ筋はトンカツを使った品だ。定番の「カツ丼」「カツカレー」や、お客様のリクエストで誕生したえび天とトンカツを一緒に卵とじにした「天カツ丼」、公一さんが始めた「ソースカツ丼」、カツ煮とご飯を別々にした「バラカツセット」など単品でもボリュームがある品に加え、セットメニューも学生のお腹を満たしている。
 麺類はうどんを中心にそばや中華そばを創業時とほぼ変わらず提供しているが、こちらも公一さんの発案で始めた「ごぼ天うどん」なども提供している。うどんには国産小麦「きたほなみ」を使用するなど、材料にもこだわっている。ただボリュームが多いだけではないことで、『八百音』の味が長年愛される理由がわかる。
天とじ丼とカツ丼の良いとこどりの「天カツ丼」。お客様のリクエストから生まれた一品。
「五目うどん」は天ぷら、牛肉、油揚げ、玉子など具だくさん。
これからの寒い季節には「カレーうどん」などの注文も多くなる。
 創業から半世紀を超えた『八百音』の味は、三重大学に通う学生のソウルフードともいえる伝統の味になっている。家族経営の温かさがあることも、一人暮らしの学生にとっては安心感がある。それだけではなく、様々なお客様にとって一息ついて、いつも変わらぬ味を味わえる『八百音』は地域に欠かせない麺類店として定着していることに間違いはない。

八尾音

三重県津市江戸橋1-129-5

059-232-7155