4種類の手打ちそばを求め
県外からも来店する
『一心庵』は、1982(昭和57)年に、主人・茂木純一さんが、自身の故郷である群馬県甘楽郡甘楽町福島で創業した。その後、1992(平成4)年に現在地に移転した。
「最初の店の時から手打ちそばを提供していのですが、出前が多く、七三で打っていました。しかし、怪我をしてから店売りに絞りたいと思い、現在の場所に店を構え、店売りに特化しました」と話す。
『一心庵』のそばは、全て手打ちだが、特徴的なのは4種類のそばを用意していることだ。うどんも手打ちだが、圧倒的にそばの注文が多い。現店舗に移転してから基本のそばは二八にし、十割そばなども打つようになった。提供している4種類とは、二八そば、十割そば、更科そば(七三)、だったんそば(二八)だ。二八そばと十割そばには丸抜きから自家製粉したそば粉を使用し、更科そばとだったんそばは、そば粉で仕入れて打っている。さらに今秋頃からは、玄そばからの自家製粉を始める計画をしている。
茂木さんは「今仕入れている業者は大変信頼できるので、玄そばの状態でも良いものを入れてくれます。そこで、玄そばから製粉することにしました。その方がそばの鮮度も高くなるし、香りも良いと思います」という。
お客様が注文する比率は二八そばが多いが、限定30食の十割そばや、健康重視のお客様もいて、だったんそばも一定数注文がある。更科そばはあっさりとしていて、女性のお客様が好まれる。
そばは茂木さんの好みもあり、細めに打つ。つながりにくいだったんそばや更科そばも同じように打っているので、のどごしが良い。つゆは多めにつけて召し上がるお客様が多いこともあり、薄めにしているというが、出汁の味がしっかりしているので、それほど感じない。4種類のどのそばにも合うように、丁寧に作られている印象だ。
週末は県外ナンバーの車が並ぶという『一心庵』。新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止のための移動自粛の影響は大きく、売上の減少幅も決して小さくはなかったが、少々離れた場所からも来店する地元のお客様などが変わらず来店してくれた。5年ほど前には2代目・一也さんも店に入り、現在は二八そばの製麺を担当している。
4種類の本格手打ちそばが県内外のお客様を呼び込んできた『一心庵』は、自家製粉のグレードアップを図り、今年の新そばの時季からはさらに香り高いそばを提供できそうだ。