親子で協力し
「藤うどん」を看板商品に
埼玉県春日部市の「藤花園」(牛島の藤)は、藤の花の名所として知られ、開花期には多くの人が訪れる。この名所を麺類で再現したのが「藤うどん」だ。鮮やかな紫色をした「藤うどん」は、埼玉県組合・春日部支部が2003(平成15)年に開発したご当地うどんで、紫芋の粉をうどんに練りこんで製麺する。昨年から店で提供するうどんはすべて「藤うどん」にし、店の看板商品として提供している店が『めん房朝日屋』である。
1972(昭和47)年に時田信吉さんが開業した『めん房朝日屋』は、2001(平成13)年に現店舗に建て替えた。大型バスが駐車できる駐車場も備え、席数120席を誇る大型店舗だ。今は2代目・時田将利さんが店に入り、親子で力を合わせて営業している。将利さんは「父との関係は良好です。お互いに尊重しながら、任せるところはそれぞれに任せています。私が色々なことを始めても、父は温かく見守ってくれているので、とてもありがたいです」と話す。将利さんは後継者として、時代に合わせた施策を積極的に進めてきた。店の経営に関する将利さんの工夫の源泉となっているのは、組合や青年会活動を通じて知り合った様々な同業者の先進的な取り組みについての学びだ。研修会や勉強会に積極的に参加し、繁盛店の店主から様々なアイディアを得て、それを自店の経営に取り入れている。5年ほど前にメニューを見直し絞り込んだり、座敷であった席を板張りのテーブル席に改装したことはその成果だ。考えているよりもやってみるという将利さんの姿勢は後継者として心強い。先代の信吉さんはそれを見守りながら、自身の役割を果たすことで支えている。
メニューの絞り込みの際に、そば店の売れ筋である「天ぷら」「鴨」と、自信を持って提供している「マグロ」、店のオリジナリティである「藤うどん」、これらを柱にメニューを再構築した。その結果、品数と素材の数を減らすことができ、食材のロスも減少した。マグロや海老も良い材料を仕入れることでお客様も満足し、比較的単価が高くても注文が入る。そして、見た目も鮮やかな「藤うどん」が華を添える。当初は製麺業者から仕入れていたが、現在は自店で製麺、昨年までは白いうどんとともに提供していたが、仕込みの手間を考えて、「藤うどん」のみにした。
春日部市の新名所である「首都圏外郭放水路」は治水施設だが、地下神殿の造りが話題を呼んでいて、観光客も訪れる。コロナ禍からの回復が見えてきた昨今、『めん房朝日屋』にも観光客が足を運ぶ。バスが駐車できることから団体の予約も入るという。市観光協会の呼びかけで作ったコラボメニュー「龍Q地下神殿藤うどん」は、インパクトのある見た目だけではなく、専門店の味を楽しめる本格派の品である。
<店舗ホームページ>
http://menbou-asahiya.jp