他店研究を怠らず
自店の営業に活かす
水戸駅から車で20分ほどの場所に店を構える『つたや』は、1912(大正元)年創業、創業112年目を迎える老舗そば店だ。現店主・岩崎政一さんは3代目、千代夫人、4代目・岩崎正渡さんとともに、歴史ある店を守っている。
『つたや』は水戸駅から神栖市を結ぶ県道50号線沿いに立地しており、周辺は住宅が多い。岩崎さんの祖父が創業した当時は那珂川の近い場所で、川が氾濫する度に店が浸水していたという。そのような災害を避けるために1968(昭和43)年に現在地に移転した。その後、近くに茨城県庁や官庁が移転し、人口増加により住宅が増加してきた。
岩崎さんは常に他店研究に余念がない。個人経営やチェーン店を問わず、新たな試みをしている店を調べ、実際に来店するなどしてリサーチしている。同業者との勉強会にも参加し、情報収集する。そして、それを自店の経営に積極的に取り入れている。「いいことはどんどんやらないと、せっかく色々なことを教えてくれる人もいるのだから、活かさない手はない」と話す。
こうした岩崎さんの研究熱心な姿勢により、店には数々の名物商品が並ぶ。「きざみ鴨汁」はその1つで、鴨の脂でコクを出したつけ汁で食べる鴨せいろそばだ。見た目にインパクトがある「板そば」、独特の器を使う「ジャワカレー」など、他店との差別化にもつながる独自商品は店の強みになる。商品の提供方法に一工夫を加えた、「勝負カレー汁そば」は、約2人前半のそばとカレー汁を提供する。食べ切った場合と食べ切れなかった場合で料金が異なるユニークな商品だが、注文する方はほとんど完食するという。
店の売りとなる商品、目を引く提供方法などは岩崎さんの研究の成果だが、これだけでお客様を満足させることはできない。『つたや』の商品はどれも良い食材を使い、専門店として自信をもって提供できる味となっていることが基本にあることはいうまでもない。
そばの主産地のお客様はそばの味に厳しい。そうした当地で112年という歴史を重ねてきた『つたや』。4代目となる後継者を得たことも心強い。創業150周年も見えてきた。