良質な玄そばと水を使い
打たれるそば
福井県大野市は町中の至るところに水が湧く湧水で有名な地で、この水と地元産の玄そばを自家製粉したそば粉で打つ十割そばを提供しているのが『そば処 福そば本店』だ。店舗をリニューアルし、昨年10月に新装開店した。「以前の店の隣は魚屋で、2軒の店が同じ建物の中にあったような造りでした。魚屋だった部分も含めて当初は改築を考えていたのですが、建て直した方が良いことになり新築リニューアルしました」と話すのは2代目の加藤省吾さんだ。加藤さんの父親・加藤和彦さんが1962(昭和37)年に開業し、創業60周年を迎えた。
大野市はそば栽培が盛んな地域で、県内で3番目の収穫量を誇る(令和2年産)。加藤さんはは、地元産のそばを玄そばで仕入れ、自家製紛して手打ちでそばを打つ。良質なそば粉と冒頭に書いた良質な水それだけで打つ十割そばが『そば処 福そば本店』の最大の看板商品だ。そばは白めで滑らかな仕上がりになっている。
それゆえに品書きもそばを中心に据えたシンプルなものだ。福井県では欠かせない「おろしそば」を始め、3種類のおろしそばが楽しめる「おろし三昧そば」(おろし・なめこ・えび天)、4種類の具材をあしらった「奧山そば」などの冷たいそばや、「舞茸そば」「宝慶寺そば」(舞茸の天ぷら)といった地元産のブランド舞茸「九頭竜まいたけ」を使用した温かいそばを提供している。「おろしそば」の大根おおろしは辛めで、その旨をメニューに記載してあるので、苦手なお客様にも対応できるようにしている。平日は「ミニカツ丼」「ミニ天丼」と「ざるそば」「おろしそば」をセットにした平日の限定セットメニューを提供している。ソースカツ丼もおろしそばと並んで福井県の麺類店の代表的な品物だが、『そば処 福そば本店』では改装後に提供するようになったという。
創業60年を期に新たな出発をした『そば処 福そば本店』、加藤さんのご子息・加藤大崇さんも店に入り、後継者として腕を磨く毎日だ。創業100周年に向けて後継者を得たことは、加藤さんにとっても店にとっても大変心強いことだ。