「あおもり海道そば」
地元産のそばを様々な味で
青森県・津軽半島の北端から夏泊半島にかけて、陸奥湾を望む海沿いで生産されていることから命名された「あおもり海道そば」は、ブランド名としてもわかりやすい名称だ。「あおもり海道そば」を使用している『そば処 正嵐』は、JR青森駅近くの商店街に店を構えている。
現在はそばのみを扱う『そば処 正嵐』だが、3代目店主の五十嵐正和さんは、「戦後にできた市場の中で祖母と叔母が食堂を始めたのが戦後まもなくのことです。その後、父が受け継ぎ、私で3代目になります。以前はラーメンやカレーライスもある店でしたが、私の代になり、そば一本でやってみたかったので、今の形に変えました」と話す。
平成8年頃から同業の先輩より教えを受けながら、そば専門店へと舵をきり始めた。青森ではラーメンの人気が根強く、それまではお客様の半分はラーメンを注文されていたこともあり、不安もあったが、ラーメンの販売を期間限定にするなど、徐々に変えていったという。製麺・製粉も自分で行うようになり、『そば処 正嵐』は、そば専門店へと進化した。
五十嵐さんは「同業の先輩方が色々と教えてくださったことが大変役立ちました。出前もラーメンもやめるのは勇気がいりましたが、思い切ってやってみて良かったと思います」と、そば専門店へ変えた心境を話してくれた。
そばが変わったことでつゆも見直した。冷たいそばは昆布・椎茸・本節、温かいそばは本節・宗田節・鯖節でそれぞれだしを取り、かえしも別々に仕込んでいる。地元では比較的薄めのつゆにたっぷりとそばをつけて食べるお客様が多かったため、つゆの味を変更した当初はとまどった方も多かった。
しかし、そばに特化したことで、そば好きのお客様が来店するようになり、県内産「あおもり海道そば」を使用した自家製粉も、安心感へとつながった。
そばがきや趣味のそば打ちに使用するため、そば粉を購入する方もいる。
メニューを見ると2種類の味が楽しめる「正嵐そば」をはじめ、お客様の要望で始めた「くるみそば」、「もち天せいろ」「にしんそば」、県内産無農薬栽培の辛味大根を使用した「極辛おろしそば」などが並ぶ。夜はお酒を召し上がるお客様も多いため、4種類の酒肴をセットにした「晩酌セット」や品数の多い「夜の定食」など、昼も夜も楽しめる構成になっている。
店の前に青森市役所の窓口機能が移転し、商工会議所が立地するなど、昼時は特に忙しくなった。また、クルーズ船の寄港によるインバウンド需要や、駅からも近いことで観光客の利用もあり、多種多様なお客様が来店されるので、青森県産のそばが様々な味で楽しめるのはうれしい。
「忙しくなってきたので、メニューも絞り、営業時間も見直しました」という五十嵐さん。店で提供するものはほとんど手作りするなど、専門店の名前に恥じない仕事ぶりが、随所に見える。