青森ラーメンの歴史
語り継ぐ一杯
青森市民はラーメンが好きだ。市内には200軒を超えるラーメン店があるという。中でも『くどうラーメン』は、戦後まもなくから営業する青森ラーメンの歴史そのものといえる存在だ。
3代目店主・工藤公さんの祖母・みよさんが弘前から青森に移り、市場の近くに『工藤そば屋』を開業したのが昭和23年。当時はそば・うどんも扱っていた。昭和40年に、父親の惣之助さんが新店舗を建築した頃からラーメン専門店となり、昭和63年に、工藤さんが店に戻った。平成17年には道路に面した現在の店舗が完成した。店の裏にある旧店舗は製麺所として利用している。
開店時間は遅くなったとはいえ、市場時代の名残で朝8時から16時までの営業だが、朝からお客様は入れ替わり絶えず入店してくる。最近は朝食にラーメンを食べる「朝ラー」という言葉も一般的になってきたが、『くどうラーメン』はその先駆けであったともいえる。
『くどうラーメン』のラーメンは透き通った、優しい味わいのスープに、細めの縮れ麺を合わせた伝統的な青森のラーメンだ。工藤さんは、「スープは焼干しと昆布でとった魚介スープと、トンコツ・地鶏シャモロックの鶏ガラでとったものを合わせています。そば・うどんを提供していた頃は、魚介スープをベースにつゆを作っていました。お客様によっては、魚介スープだけでという注文もあります」と話す。素焼きにした魚を干した焼干しは、手作業で手間がかかるが、煮干しよりもよくダシが出る。
ラーメンのサイズが「特大」(麺2玉)・「大」(普通盛)・「中」(麺1玉)・「小」(すくな目)と別れているのも『くどうラーメン』の特長で、「特大」以外は祖母の時代から受け継がれてきた。「昔から「大・中・小のくどう」と言われていました。「特大」は、量が多いラーメン店が増えてきたので、私の代になってから作ったものです。「小」は少な目の量でも食べられるので、高齢の方や食べ歩きのお客様には便利かと思います」という。各サイズとも10杯分の価格で11杯分食べることができる回数券もリピーターや家族連れに好評だ。
メニューは他に、麺3玉にトッピングを全て乗せた「満腹」、具がねぎだけの「サービスラーメン」、夏季限定の「ざる中華」に各種トッピングと、サイドメニューの「おにぎり」、「おでん」とシンプルだ。100円で提供される「おためしラーメン」は珍しいが、中華スープ用の食器に味見程度のラーメンが盛られたものだ。これを食べてから「ラーメン」を注文したお客様には100円を返金する。
最近は青森市内にも外国人旅行者の姿が増えてきた。『くどうラーメン』が紹介された漫画本が中国や韓国で翻訳され、それを見た外国人のお客様が来店されることもある。通常は提供していないが、肉類を食べられないお客様向けに、魚介スープと塩で作った「海鮮ラーメン」も開発。具材にも麩や椎茸を使い、肉類を使っていない。
新たなお客様が増えても変わらない味、伝統の青森ラーメンを受け継ぐ『くどうラーメン』の存在は大きい。