そばの散歩道

お店紹介

各地の名店

明確な経営目標で
店を新たなステージに

 埼玉県川口市の『お蕎麦や 杉うら』は、鉄道駅からは離れている、郊外形の大型そば店だ。1964(昭和39)年に、現店主・杉浦達雄さんの父親・晨雄さんが『川口 大むら』として創業した。戦時中の食糧難を経験した晨雄さんは、「お客様にお腹いっぱい食べてほしい」という思いを大事にし、地域に愛されてきた。達雄さんが店に入ったのは2002(平成14年)だ。
 「私は旅行会社に勤めていたのですが、周囲からはなぜ仕事を辞めるの、技術もないのにそば店を継ぐのは無理と、言われました。確かに修行したわけではないし、技術がないのも確かです。でも店をなんとかしたいという思いで戻りました」と、達雄さんは話す。

席数は70席(現在は新型コロナウィルス感染症対策で削減)を有する『お蕎麦や 杉うら』の店舗の内外観。一番右は2階で、畳敷きの宴会場であった場所をテーブル席にリニューアルした。随所に以前の店の建具を使用し、伝統の継承も表現している。
 達雄さんが店に入った当時は、最盛期の売上が半減、非常に大変な時期だった。そこで営業職の経験を活かし、明確な計画目標をたてた。それは「毎年売上を10%増やす」というものであった。そのために「当たり前のことを当たり前にやろう」と、味の安定や接客など、できるところから見直しを始めた。
 また、業界の専門家や、同業者にも積極的に教えを受け、良いものはどんどん取り入れていった。
 そして、その集大成として2015(平成27年)に店舗改装と店名変更を行い、『お蕎麦や 杉うら』として再出発したことだ。メニュー構成は、鴨と天ぷらを柱に、少数精鋭の品書きとした。食材も目に見える食材を使用、産地などをメニューブックに明記している。また、自家製粉を行う石臼は店頭の目に着く場所に配置し、お客様に好印象を与える。
 特に「特盛鴨汁せいろ」は『お蕎麦や 杉うら』を代表する品だ。ただ量が多いだけではない。京都産の京鴨を使用した濃いめの汁で最後まで飽きずに食べることができる。お得感と専門店の味が両立した品だ。
店の看板商品「特盛鴨汁せいろ」は、晨雄さんと達雄さんが店を代表する商品に育て上げた、親子共作の一品だ。そばは一番粉に自家製粉のそば粉を加えて打つ。
「天ざるそば」「海老天丼と小さいおそば」など、天ぷらというそば店の強みを活かし、力を入れている。
削りたての半生の鰹節を使用した「お蕎麦やシーザーサラダ」は揚げそば、もり汁のジュレを使っている。
 新型コロナウィルス感染症の影響を聞くと、4月はかなりあったものの、6月には客足も戻りつつあるという。これを契機にテイクアウトも始めた。チラシの裏には、できるだけ店に足を運んでいただきたいという考えの下、店舗内の対策も明記し、安心して食事ができることをアピールしている。動画も作成し、ホームページや店頭で放映している。
 達雄さんは「父と喧嘩しながら今の店を構築してきましたが、これだけの店がもともとあったからこそできたことで、父には感謝しています。当店は郊外で、地域密着だっがこと、宴会よりも食事の需要にシフトしてきたので、新型コロナの影響も少なくてすみました。お客様が求めているのは安心・安全に食事ができることだと思います。基本的なことをきちんとやりつつ、今の状況に対応した商売のやり方を考えたい」と、飲食店にとっては困難な状況下、前向きに進んでゆこうという意志を話してくれた。
<店舗ホームページ>https://osobaya-sugiura.com

お蕎麦や 杉うら

埼玉県川口市蓮沼255-1

048-281-3421