そばの散歩道


  
第48回 鵜飼良平さん

そばは元気の素
食材表示で健康&美味をアピールしよう

第48回 
鵜飼良平さん
(日麺連会長)

鵜飼良平(うかい りょうへい)
1937年東京都生まれ。江戸そばの伝統を継承する「上野藪そば」3代目主人。73年、藪系列の店で初めて完全手打ちそばに切り替える。以来、業界の指導者として多方面で活躍中。2002年、日本麺類業団体連合会会長就任。著書は『旨い江戸そば』、『手打ちそばのすすめ』、『知識ゼロからのそば入門』など。

そば屋離れが始まったその理由は…

― そばブームと言われて久しいですが、なぜ「そば屋ブーム」にはならないのでしょう。

鵜飼 全国的にそばの嗜好の幅が広がり、そば屋の数は減っているのに、そばの需要は増えている。これは、素人さんがそば打ちを始めるようになったからです。つまり、そばが、外食でなく「内食」になってしまった。自分で打つというのは趣味の世界ですから、おいしいそばをつくるために材料はもちろん、技術的なこともとことん追求してきます。それに比べ、今のそば屋は、戦後の物不足(売れば何でも売れる)時代に開店した店が多いですから、技術は機械まかせ、材料は粉屋まかせ。自分の技量は疎かなわけです。そこへ素人さんの贅沢三昧なそばが伸びてきて、そば屋離れが始まり、そばブームなんだけど、プロの世界は置き去りにされてしまったというのが現状です。

― 2代、3代と続くそば屋では、技術の向上もあるのでは?

第48回 鵜飼良平さん

鵜飼 3代目まで維持している店は何とかなっています。今の食事情についても随分と研究していて、時代に合ったメニューを開発したり技術革新を行ったりして、流行っている店が多いです。

― 江戸蕎麦の伝統を守って繁盛している店もありますよね。

鵜飼 昔のしきたりや技術を頑なに守り続けてきたおかげで、見直されている店もあります。

― 横浜に女性客が絶えないそば屋があります。ご主人が女性に受けるような美しい料理を研究してきた成果のようです。

鵜飼 女性客をつかむと、リピーターになってくれるからいいですね。そば屋がこれから飛躍していくためには、もっと女性客を惹きつけるような工夫をしていかなければなりませんね。

若いそば職人にもっと活躍してほしい

― 組合として社会にアピールできる─「あの店は日麺連に加入しているから違うんだ」と思わせるような仕掛けはできないでしょうか。青年会にももっと頑張ってもらって。

鵜飼 おっしゃるとおりです。我々も、青年会の時代にお互いの意思疎通を図り、いろいろなことに取り組んで現在の組織をつくりあげてきました。それが今は、青年会がなくなってしまう地域もある。私は、将来に向けて若い人たちを育てていくことが、次の食文化につながると思っています。

第48回 鵜飼良平さん

― そういう意味でも、他の組合とも交流できるようになるといいですね。酒の組合や鮨屋とか。そば屋のご主人は、もっと地域の格になれる思うんです。

鵜飼 我々の世代は、遠慮っぽいのが日本人のモットーみたいなところがありましてね。誰かに言われなければ手を挙げない。でも今は時代が違いますから、若い人たちにはどんどん外に出て、業界を盛り上げてもらいたいですね。

― そば屋が勝ち抜いていくにはどうしたらいいんですかね。

鵜飼 今の消費者は美味しいものをわかっているし、店を見る目もある。だから、常にいろんなものを比較するわけですよ。そば屋はサービスの面でも今ひとつ不十分ですから、そういうところを消費者は敏感に感じるんでしょう。最近、レストランなどに行くと、この肉は○○産の▲▲さんがつくったものですとかありますよね。

― それです、素材の説明。それを鰹節でやってはどうでしょう。当店のだしは、○○の鰹節を▲ミリに削ったものを使っていますとか。そういうものが関心を呼ぶと思うんです。

鵜飼 そば粉に関しては表示するようになってきましたけど、料理の工夫などと合わせ、もう少し説明する必要があるかもしれませんね。黒板を店先に置いて、今日の鰹節は土佐の○年もの、とか。

第48回 鵜飼良平さん

― 絶対違いますよ。玉子丼の卵は○○を使ってるとかね。

鵜飼 うちも10年くらい前から、卵は有精卵を使っています。ちょっと高いですけど、コクがあって黄味がよく立ち、出来上がりが全然違いますね。

― 日麺連として、最低限これだけはやろうというところから表示してはどうですか。もともとそばは健康食ですし。

鵜飼 最近は、健康だ、安全だと言われていますからね。2010年度は、「食材表示をしよう」。これでいこう!

腹の足し、酒の肴にそばは自由に楽しんで

― 最後に、そば屋の親父として、そば好きの人に一言を。

最近、そばの食べ方についてよく取材を受けますが、基本的に決まりなんてないんですよね。強いて言えば、酒を飲みながら食べるそばと、腹が減ったときに食べるそばの食べ方は違います。酒の肴として食べるときは、水が切れたそばの方がうまい。ちょっと固まったそばに酒をふりかけほぐしながらつまみにする。昔からよく言うでしょ。これに対して、腹を膨らませたいときは、水の切れてないものを一気に食べる方が満足感があります。そういう記事が紹介されたら、酒を飲みながらそばをつまむ人が増えました。嬉しいことです。

(10年1月12日 麺業会館にて収録)撮影/ 幡野好正




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