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古代米は赤か、黒か?ホントは分かりません― 2006年5月号から3年間、巻頭随筆「飲み食い話の玉手箱」にご執筆いただき、誠にありがとうございました。世界中を回られていらっしゃいますが、ご専門はイネですよね。 佐藤 はい、イネの遺伝学です。現代はDNAの時代で、生きているものからDNAを取ることは誰にでもできますが、我々は、死んでいるコメ、例えば、遺跡から出てきたコメ粒からDNAを取る仕事を、日本で最初に始めたのです。 ― 赤米も死んだコメから取ったものですか。 佐藤 古代米と呼ばれているものですね。あれは生きているコメです。みなさん、古代米=赤米というイメージがあるようですが、証拠はどこにもありません。古代米とは、昔の性質を持っているものを言うんです。
― 昔の性質というのは? 佐藤 それは分からないんですよ。古代のコメのことなんて誰も知り得ない。古代は赤かったに違いないと誰かが言ったんでしょうね。弥生時代の遺跡からも真っ黒になったコメがよく出てきますが、丸いか細長いか、これも形くらいしか分かりません。 ― コメとコムギを比べると、どちらが(食糧になる)穀物として優れているのですか。 佐藤 そういう議論もよく出ますが、私の答えは「どちらとも言えません」。日本ではコメの方が優秀だという考え方もありますが、ヨーロッパでは違うでしょうし。 ― 気候風土の関係ですか。 佐藤 そうです。気候風土を無視して考えてはダメです。ムギは粉になると言いますが、いつから食べていたか分からないんです。ヨーロッパでは非常に古い時代から臼が発見されていますから、挽いて食べていたと分かりますが、東洋では必ずしも臼がないのにムギがある。どうもモンゴルなどでは挽き割りにして発酵させていたようです。 ― お粥状ってことですか。 佐藤 甘酒みたいな感じですかね。 酒も味噌も醤油も、ブレンドした方が旨い― 食べることはお好きですか。 佐藤 大好きです。いつ糖尿病の宣告をされるかビクビクしながら食べています(笑)。 ― ご出身は和歌山でしたね。 佐藤 潮岬です。本州の最南端。 ― 味は関西系? 佐藤 父が東(静岡)、母が西(和歌山)の出身で味はチャンポンですから、私自身は変な味覚になっていると思います。幼いころから母が働きに出ていましたので、小学4年生くらいから料理をするようになって。味噌汁もつくってましたよ。 ― やはり白味噌ですか。 佐藤 合わせていました。味噌や醤油、ワイン、コーヒーなどは、混ぜた方が断然おいしいと思います。味が複雑になりますから。ブレンドというのは文化なんです。でも、近ごろはブレンドすると叱られるでしょう。 ― 本来は味をよくするためにブレンドしていたのに、最近は品質をごまかすためのものになってしまいましたからね。
佐藤 そうなんです。まさにごまかし文化ですよ。これが通用するようになった最大の原因は、消費者の舌がダメになったからです。以前、偽コシヒカリの探偵をしていて、実際にコメを一粒ずつDNA検査したことがあります。すると、袋には○○県産コシヒカリって書いてあるのに、明らかに違うものが入っている。当時はあまり問題になりませんでしたが、世の中が段々厳しくなって、偽コシヒカリと言われるようになったんです。一番怒ったのは、長らく騙されてきた消費者です。それは不正に対する憤りというのももちろんありますが、なにより、騙されていたことに気づかなかった自分の舌の情けなさ……。消費者は、その事実をもっと感じなければいけませんね。 新疆ウイグルの麺「ラグマン」を日本でも!― ところで、麺食は世界中にあるのですか。 佐藤 北ヨーロッパにはありません。今はジャガイモですが、昔は挽き割りのオートミールみたいなものを食べていたようです。中央アジア一帯は麺文化です。 ― インドはカレーに…。 佐藤 チャパティですね。標高の高いところは、沸点が高く麺をゆでることができませんから、焼いた方がいいんでしょう。という意味でも、チベットから南の山のあたりは、伝統的に麺はないのかもしれません。 ― 先生が以前書かれた「ラグマン」(06年11月号)は、実に興味深い食べ物ですね。 佐藤 中国北西部の新疆ウイグルあたりにある讃岐うどんに似た麺のことですね。あれは実に旨い。日本でも、誰かやりませんかね。
― レシピはどんなですか。 佐藤 すごく簡単です。麺はコシの強い讃岐うどんがいいですね。上にかける具は、マトン、タマネギ、ちょっと辛みのあるピーマン、あとは好きな野菜を強火で炒めて。味付けは醤油とケチャップがいいでしょう。 ― ジンギスカンのうどんバージョンってところですか。 佐藤 そうそう、そういう感じです。 ― そばでやってもいいかもしれませんね。 佐藤 それなら、ダッタンそばです。これは絶対、流行りますよ! (09年1月16日 「麺業会館」にて収録)撮影:STUDIO MAX 高橋昌嗣 |
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