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憧れの怪しげな町、横浜に暮らして40年― 山崎さんは最初から小説家としてスタートされたのですか。 山崎 一番最初はコピーライターで、それから子ども向けの本を書きました。映画が好きだったので、脚本家になりたいなと思って脚本も書くようになり、小説家になったのは、38歳のとき『花園の迷宮』で江戸川乱歩賞を取ってから。遅いですよね。 ― 脚本と小説はやはり違うんですか。 山崎 違いますね。実は私、小説みたいな緻密な作業が大の苦手で、「シマッタなあ」と今でも思っています。例えば、この部屋を描写する場合、脚本だと「そば屋の部屋」と書いておけばいいんですよ。あとは台詞と構成だけ。しかし小説だと、どんな部屋か、誰がどういう顔で座っているかなど、細かく書かなければダメなんです。
― ものを書くことは子どものころから好きだったのですか。 山崎 読む方が好きでした。ミステリー一辺倒。映画も好きでよく見ていました。こちらは完璧な娯楽作品。当時は、東映、日活、大映、東宝と、邦画全盛の時代でしたから。 ― 僕は東映の時代劇ばかり。 山崎 みんな、それぞれのカラーがあって面白かったですよね。亡くなった主人(山崎巌さん)が脚本家で、日活アクションを書いていました。小林旭の「渡り鳥シリーズ」とか。私は日活映画を見て、怪しげな町、横浜に憧れたんです。 ― そういえば、山崎さんの作品は横浜を舞台にしたものが多いですよね。 山崎 はい。ドヤ街とか風俗街とかに興味があって、創作意欲がすごくわくんです。一昨年、30年ほど暮らした横浜の緑区から南区に引っ越しました。この辺りはすごくごちゃごちゃしていて、アジア語が飛び交っている。とても横浜らしい場所で、気に入っています。 ― 怖くないですか。 山崎 これが当たり前の横浜だと思っていますから。横浜=欧米人が多いというイメージの方が違っているんですよ。 お銚子一本で気持ちよくなれる
― お酒はよく飲まれますか。 山崎 必ず晩酌はします。でも、決して強くはないから、たいてい、夜、食事と一緒にお酒をいただくと、皆さん次はバーで一杯となりますが、「すみません、私は帰ります」という感じです。 ― ご両親も飲まれなかったのですか。 山崎 いえ、すごい酒飲みです。親譲りだったら、きっとアル中になっていましたね。おそらくお酒を一滴も飲まない方が、私の体にはいいんだと思います。それでも、「軽く一杯」というのは好きです。日本酒を熱燗でね。 ― 日本酒は、燗をした方が旨いんですよ。江戸時代などは、ほとんど熱燗です。 山崎 よかった。私は、すごくいいお酒をいただいても、全部お燗しちゃうもんですから。夏でも熱燗です。 ― 僕もそうです。それと湯豆腐。 山崎 いいですね、私も冷や奴より湯豆腐です。いつでも一杯やれるように、豆腐は切らせません。 人生最後の食事は絶対、お寿司!― 食べることはお好きですか。 山崎 一度にたくさんの量はいただけませんが、食べることは大好きですね。若いころは、フランス料理やイタリア料理に憧れますよね。あれも今考えてみたら、素敵なレストランに行きたかっただけで、特に好きでもなかったんだなあと思います。結局、行きつくところは和食で、年齢とともに素朴な味を求めるようになっています。何よりお米が大好きで、毎朝、しっかりご飯を食べています。 ― おかずはどんなものを? 山崎 みそ汁に自家製のぬか漬け、焼き魚、残り物の煮物などです。 ― 納豆はいかがですか。 山崎 食べますよ。私は関西出身ですから、最初はものすごく抵抗がありました。「こんなまずいものを!」って。おそばも、少しもおいしいと思えなかった。 ― 特に、汁そばは色が真っ黒ですからね。 山崎 ええ、なんて下品な食べ物かと思いましたね(笑)。やはり温かいおうどんで、澄んだおつゆじゃないと。でも、だんだん慣れてきて、今では納豆は大好きですし、一杯やるなら、うどんよりおそばです。 ― お寿司はいかがですか。 山崎 大好き! 私は、贅沢はいいませんが、お寿司だけは絶対おいしいところで食べないとイヤなんです。ただ、高いものが好きでアワビ、中トロ、ウニなどが定番。ですから、誰かにごちそうしていただく場合は、すごく食べにくいんです。自分でお金を払う方が遠慮なく食べられていいですね。
― 僕は安いのが好きなんです。マグロなら赤身、タコ、コハダ…。 山崎 あら、それじゃあ、ぜひご一緒して、高いものは私が……。よく死ぬ間際に何が食べたいかとかありますよね。私は、日本で一番といわれるようなお店の特上寿司を食べたいですね。 ― お料理はされますか。 山崎 料理は大好きというほどではないんです。でも、一人でお店に食べに行くのが恥ずかしくてね。以前、思い切ってお寿司屋さんに入ったら、誰もお客さんがいなくて、カウンターに一人座って、1対1ですよ。ものすごく居心地が悪かったですね。ですから、たいがいは家で簡単なものをつくって食べています。夏でも一人鍋が多いです。あと、ホテルのルームサービスで一人で食べるのが好きなんです。和食と熱燗を頼んで、パジャマに着替えてのんびりと……。シアワセですよ。 (08年12月19日 「利久庵」(横浜・関内)にて収録)撮影:STUDIO MAX 高橋昌嗣 |
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