そばの散歩道


第29回 神田 すみれさん

関西ではうどん東京に来てからそば好きに

第29回 
神田 すみれさん
(女流講談師)

神田 すみれ(かんだ すみれ)
兵庫県生まれ。文学座附属演劇研究所、演劇集団「円」を経て、1980(昭和55)年二代目神田山陽門下に入門。83年二ツ目昇進、89年真打ち昇進。読み物に「赤穂義士伝」(南部坂雪の別れ、赤垣源蔵、堀部安兵衛 他)、「怪談もの」(四谷怪談、牡丹灯籠、真景累ヶ淵)、「偉人伝」(日蓮上人、空海〈弘法大師〉、白隠禅師)。その他、古典物、新作物多数あり。創作講談も得意とする。現在、本牧亭、上野広小路亭、日本橋亭、国立演芸場、NHK「講談大会」「日本の話芸」に常時出演中。また、「お江戸演芸スクール講談教室」、「神田すみれの講談教室」(池袋コミュニティカレッジ)の講師も務める。

ナマコだけは食わず嫌いです

― 兵庫県ご出身。やはり関西系の味がお好きですか。

神田 そんなことないですよ。私たち芸人は、お客さんにごちそうになることが多いですから、関西系とは限らないですね。自分で料理をつくるときも、薄味だなと思うと、砂糖や醤油を追加しちゃいます。

― おそばはいかがですか。

神田 関西では、そばよりうどんなんですよ。上京して、おいしいおそばを食べてからは、すっかりそば好きです。ざるも、東京で初めて食べました。今は旅巡業に出ると、昼はだいたいそば屋へ行きます。車で移動しながら、駐車場が混んでいる店を見つけると「ここ、おいしいのかも」って。

― 好きな食べ物を挙げると?

神田 お寿司も、おそばも、うなぎも好きです。先ほどいただいた鰻重、おいしかったですね。甘くないうなぎは初めてです。何でも食べますが、ナマコだけはダメ。名前を聞いただけでゾッとします(笑)。

― 納豆はいかがですか。

神田 昔は食べませんでしたが、スタッフに茨城出身の人がいて、「水戸の納豆はおいしいし、栄養もあるから、騙されたと思って三日間だけでも食べてください」と言われて。で、毎日、鼻をつまみながら食べていたら、結構、大丈夫だった。今は好きでよく食べますよ。

― お酒はどうですか。

神田 少し飲んだだけで真っ赤になって酔っぱらっちゃいます。お酒の席も酒肴も好きですから、最後までつきあいますけど。

杉村春子さんに憧れて文学座へ

第29回 神田 すみれさん

― 文学座にいらしたんですね。

神田 もともと演劇が好きで、中学の時に大映のニューフェイスに合格しました。祖母が占い師に相談すると、「これからもチャンスはあるから、今は高校でいろいろ学んだ方がいい」って。それで、辞めました。高校では演劇部に所属し、先輩のすすめで労演(労働者演劇サークル)に入りました。文学座や俳優座の芝居を割引で見ることができたので、よく通いましたね。杉村春子さんに憧れて、それで文学座を受けたんです。

― 同期の方はいますか。

神田 はい、滝田栄さんとか、角野卓造さんとかね。

― 講談の世界へ移られたきっかけは?

神田 難関を通って合格しても、研究生になれるのはほんの数人。残った人はどこか行きなさいって。そんなとき、誘われて後の師匠となる二代目神田山陽の講談を聞きに行ったんです。芝居は主役がいて、脇役、舞台装置や照明と、いろんなものの総合芸術ですが、講談は、全部一人でやるわけですよ。師匠はそのとき69歳で、どう見ても”ちんけなおじいちゃん”(笑)。それが「ねえ、ちょいと〜」とやると、本当に見えるんですよ、女ヤクザに。楽屋へ挨拶に行くと、私の顔を見るなり、「君、よかったら稽古にいらっしゃい」。私も初めて講談を見て感動していたから、思わず「ありがとうございます」って言ってしまったんです。

― そのまま入門された?

神田 はい。しばらく稽古をつけてもらっていると、今度は「君は前座になりたまえ」。それ以来、前座になっちゃいました。今、活躍中の神田紅も紫も香織も、入門はほとんど同時期で、平成元年、みんなまとめて真打ち披露を行いました。「女流真打ち誕生!」なんて、大々的に報道されましたね。

今、講談界は女性が大活躍です

― 講談のなかで、扇を叩く場面がよくありますが。

神田 張扇(はりおうぎ)といって、修羅場(軍談)を読むときによく叩きます。「頃は元亀三年壬申年……」〈パンパンパン〉という感じですね。世話物や怪談、義士伝ではあまり叩きません。でも、講談教室の生徒さんに教えるときは、あえて叩かせます。叩いた後は、グッと強い声が出るし、間がうまくとれるんです。

第29回 神田 すみれさん

― 最近の講談界はどうですか。

神田 昔に比べたら若い人が多くなったし、女性が半分以上です。

― 読み物の多くは男性講談師向けですよね。

神田 講談は人物描写ですから、女性でもできると思います。ただ、話芸は難しく、一定レベルまでは上達するけど、それ以上となるとなかなか。最後は人間性ですね。

― 落語には新作が結構ありますが、講談はどうですか。

神田 講談のなかにも新作(創作)というジャンルがあります。和歌山で林真須美がカレー事件を起こしたでしょ。そのとき「林真須美物語」をつくりました。一昨年、神田一門会で披露した「創業者列伝」は、松下幸之助(松下電器産業)や三島海雲(カルピス)、鈴木三郎助(味の素)などの出世物語です。

― 女流講談師向けの作品もあるんですか。

神田 山本周五郎の「青嵐」は女性が主人公です。夫婦のあり方、思いやりの向こうに幸せがあるというハッピーな作品なんですけど、これは女性の方が、細かい心の動きが表現できますね。

― 今後のご予定は?

神田 8月8日に日本橋亭で「すみれ右團治二人会」、9月5日に上野広小路亭で「神田一門会」などがあります。「講談は難しい」という方が多いようですが、まず10回は聞いてください。軍談から人情話まで、たくさんあります。1、2回では、たまたまつまらない話だったということもありますから(笑)

( 08年6月9日浅草・雷門「初小川」にて収録)STUDIO MAX 高橋昌嗣




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