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第18回 三遊亭圓窓さん(落語家)

そば落語の名人は、
一日一回めん食。

第18回
三遊亭圓窓さん(落語家)

三遊亭圓窓(さんゆうてい えんそう)
本名橋本八郎。1940(昭和15)年東京都出身。59年八代目春風亭柳枝に師事、前座名・枝女吉(しめきち)。柳枝没後六代目三遊亭圓生門下となり吉生と改名。62年二つ目に昇進、吉窓となり69年真打に昇進し、六代目三遊亭圓窓を襲名。出囃子は「新曲浦島」。70〜77年「笑点」の大喜利にレギュラー出演。73年、500の噺のマスターを目指し「圓窓五百噺を聴く会」をスタート、2001年に完走。
門下に吉窓、窓里、萬窓、窓輝。著書に『おもしろ落語図書館』全十巻、『男は40代に蘇える』など。創作落語にも力をいれ、多数の小話、そば落語三部作などもある。

下戸の落語家は
珍しい?

― 落語ではお酒を飲む噺を話されますが、お酒は飲まれますか。

三遊亭 お酒を飲むと、じんましんがでる体質で、親父や兄弟は飲めるんですが、私だけはだめ。そばとお酒は兄弟みたいに関係が深いし、噺はしますが……。

― 食べ物の好き嫌いは?

三遊亭 肉がだめなので、食べるのはもっぱら魚と野菜。焼鳥屋とか焼肉屋に行っても食べるのは野菜だけ。昔から家であまり肉を食べなかったからかもしれない。

― おそばはかなり好きな方ですか。

三遊亭 一日に一回はめん類。江戸ソバリエ倶楽部の人と付き合ってから、「江戸そばでなくっちゃ」なんて能書きを言うようになって。
今、日大芸術学部の講座を持っていますが、100人程の学生に好きなめん類を聞いたら、ラーメンが三分の二以上で、次がうどん、そばは三番目。江戸そばには面白みがないのかな。ラーメンは若い人向きで脂っこいし、何でもありで、具やだしに変化が出せる。彩りもにぎやかで、汁も豚骨、味噌、醤油などがある。そばの汁はそれほどの個性がない。でも、日本はこだわりの文化の国ですから、皆がこだわった結果が今のそばの汁なんでしょう。

― そばでは特に何がお好きですか。

三遊亭 やはり、もり、せいろ。楽屋でそばを取り寄せるとき、下戸の私ですが、たまに乾いたそばの上にお酒をかけて食べることがある。お酒は飲まないし、甘いものが好きなので、どちらかというと甘い汁の方が好きかな。

ラジオを聴いて
落語好きに

― そのほかのめん類でお好きなものは?

三遊亭 うどんもスパゲティも好き。以前、かみさんがゆでたスパゲティが、硬くて芯がまだ残っていたことがあった。「ゆで方が足りない」と言ったら、虫の居所が悪かったのか、かみさんはスパゲティをつかんで、庭に節分の豆みたいにまいちゃった。それからは、家では何でも黙って食べることにしました。「どう?」と聞かれたら「うまいよ」と言う。これが一番(笑)。

― 江戸ソバリエ倶楽部とのお付き合いはいつごろからですか。

三遊亭 私が創作落語を手がけているので、「そばとお寺の伝説をもとに落語を」という話を持ってこられ、練馬九品院で蕎麦喰い地蔵をやったのが最初です。次に、伝通院近くの沢蔵司稲荷の話を手がけ、三作目が蕎麦閻魔で、これも先日九品院で奉納しました。伝説や民話は落語のような独特のオチがない。ですから、一ひねりしてオチをつけるようにしました。

― 落語家になろうと思われたのは、いつごろからですか。

三遊亭 高校に入学してすぐ。落語は、中学生ぐらいまでラジオで聴いていましたが、噺家になりたいと思ったのは高校生になってからです。とにかく、勉強がいやで(笑)。中学三年で受験勉強して、何とか都立高校へ入ると、先生が「君たちはこれから大学受験に向かって頑張れ」。またか、と思ったから反抗しちゃって、「ぼくは落語家になる」と。落語が一番好きだったから、誰の影響でもなく、迷うことなくこの道に入った。
テレビが普及する前の日本人が、聴き上手だったし、話し上手だったのは、ラジオのおかげです。テレビは、見るもので、楽だしわかりやすい。そうなると、人は不精になるから想像力が衰える。ラジオは声だけなので、頭を使い、想像力を働かせて楽しむ。それが良かった。テレビが登場してからは、日本人は、聴き下手、話し下手になりましたね。

お店をほめるのは
難しいもの

― 落語を志すきっかけになった好きな落語家の方は?

三遊亭 落語を聞くのは好きでしたが、特に好きな落語家はいませんでした。あえて言えば、弟子入りした柳枝師匠。大ネタはなく、前座がやるような小ぶりの話が多かったので、好きだったのかもしれません。言葉も丁寧でしたし。

― 落語を話されるとき、どういうことに気を遣っていますか。

三遊亭 落語はリアルタイムの芸能なので、お客様の反応がなければ意味がない。能狂言や歌舞伎は「伝統の形です」と言えば納得してもらえますが、落語はそうはいかない。お客様が楽しんでくださらないと。

― 創作落語のネタは、日ごろから考えておられるんですか。

三遊亭 ネタを考えることが習慣になっちゃって、どんなことでも落語にならないかな、と考えてメモをする。だから、ネタになりそうじゃないと、読んでいる本も途中でやめちゃう。メモはパソコンに入れておいて読み返し、使えると思ったらネタ帳に書いて、必要に応じて使います。

― 話の最中に絶句するようなことはありますか。

三遊亭 調子のいいときは次のせりふが自動的に出てくるし、若いころ覚えたものは年を取っても忘れない。でも、今になって覚えたものは、一晩寝ると忘れちゃう。昨日、一門会をしたんですが、珍しい話を手がけたので、高座に上がるまで話せるかどうか心配でした。江戸時代の狂歌をやる人が、向島へ下男を連れて雪見に行く話で、歩くコースを昔の文章で述べる。それが難しい。何とかこなしたが、今朝になったらもう出てこない(笑)。

― 地方へ行ったら、食べたり飲んだりする楽しみもあると思いますが。

三遊亭 腹が減ったら何か食べますが、むしろ現地の伝説や民話に興味があって、食べ物よりそっちに行きますね。落語家になったとき、先代の林家正蔵(彦六)師匠に、そばは、うまいのからまずいのまで幅が広いから気をつけなければいけない。うどん屋へ入ればどこでも当たり外れがないと教わった。今の人は、外食でも「星、いくつ」などと点数をつけたりするが、私は店で金を払って食べても、あまりうまいまずいは言えない。ほめるのも難しいものです(笑)。

(‘07年5月31日、上野鶯谷「公望荘」でインタビュー TEL03-3822-2288)
STUDIO MAX 高橋昌嗣




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