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第6回 なぎら健壱さん(フォーク歌手・エッセイスト)

そばは庶民の食べ物で
あることが大切です。

第6回
なぎら健壱さん
(フォーク歌手・エッセイスト)

なぎら健壱
フォーク歌手。1952年東京生まれ。72年、中津川フォークジャンボリーに飛び入り参加したのがきっかけでデビュー。「悲惨な戦い」、「一本でもニンジン」などの歌で知られ、タレント・俳優としても活躍。著書に『東京酒場漂流記』、『日本フォーク私的大全』、『東京の江戸を遊ぶ』(以上「ちくま文庫」)、写真集『東京のこっちがわ』(岳陽舎)など。昭和30年代の下町の生活や子どもの遊びについても詳しい。

子どものころ、だしの味をうまいと感じました。

― 麺類がお好きだと伺いましたが、汁とめんとどちらを重視されますか?

なぎら どちらも大事ですが、強いて言えばめんを重視します。汁がうまくてもめんがダメ、というのは受け付けられない。

― 汁は甘い方が好きですか、それとも辛い方ですか?

なぎら 甘いというのは甘味の甘さですか? 辛いというのは塩辛さとは違いますよね。関東風、関西風でいえば、やはり辛い関東風、江戸前の味が好きなのかなあ。

― 関西のめんはあまり好みに合いませんか?

なぎら まず、汁の色が私の好みに合いません。東京は汁の色が真っ黒じゃないかと関西の人は言いますが、だしはちゃんと出ている。

― 冷たいそばは関西より関東の方がいいように思いますが、温かいそばは関西にもおいしい店がある。地方のそばはどうですか?

なぎら 金沢へ行った時に入った店のそばが、とてもおいしかったので、どこで修業をされたのかと聞いたら、「東京で」と言われて納得したことがあります。

― 地方の場合、めんが良くても汁がダメ、ということもありますね。

なぎら 村おこしで「ここはそば屋が何軒ある」と言われ、その場でそばを打っていただいたことがある。しかし、そばはすごく良くても、汁がどうもいまいち。

― そば屋では何を食べますか?

なぎら その時の気分でいろいろ食べますよ。でも、一杯やった後なら締めにもりですね。以前二年間ずっと、自宅でも朝食にそばを食べ続けたことがあるんです。いろんなのを買ってきて試しました。さすがに飽きましたね。

― そば好きになった主な理由は何でしょうか?

なぎら 近所のおじさんが着流しでそば屋に入って「冷やで一本ちょうだい」と言って板わさなどをつまみ、ちびちびやる。天抜きなどあればそれを取って、そばを一枚たぐってさっと帰る。子どものころ、そういうのを見ていてすごく憧れましたね。

― 最初にそばを食べた時、味はいかがでしたか?

なぎら 五〜六歳のころにそば屋に入ったとき、そばのだしの味が本当にうまいと感じたんです。ただ子どもなので、そば全部をたぐり寄せて汁につけられない。そばって食べにくいものだなと思った。その時テレビ画面にダークダックスが出ていたのを憶えています。それがそばの最初の記憶です。

― 私は、普通のそば屋さんのほっとする雰囲気が好きなんですが。

なぎら ぼくも好きですね。ただ、そばをひとすくいするとなくなっちゃうお店は、ちょっと……。そばは庶民の食べ物なのに。そういう店は値段も高い。それから、こだわってつくるのはいいけれど、どの店に行っても同じ味というのは、面白くない。

お店独自のメニューをつくってほしいですね。

第6回 なぎら健壱さん (フォーク歌手・エッセイスト)

― めんは太い方が好きですか、細い方ですか。

なぎら 細い方が汁が絡むから好きですね。太くてあまり何度も噛むというのじゃだめです。そばがきじゃないんだから。でもあまり細すぎるのもいけない。

― 立ち食いそばはいかがですか?

なぎら テレビで立ち食いそばの特集したことがあるけど、あなどれない店がありますね。歌舞伎座の横にある店はいいですよ。劇場の中にある店と同じ系列ですが値段が違う。

― 立ち食いそばは、いま大変な勢いで増えていますから、競争も激しい。

なぎら テレビの取材が入ると張り切るせいか、そのときは、とてもおいしい(笑)

― お酒はいかがですか?

なぎら そば屋はやはり日本酒ですね。暑いときはビールから始めることもありますが。つまみがうまくて、好きなお店は東京の江東区森下にある「京金」。つまみを食べて、最後にそばで締める。

― そば屋の悩みは夜なんです。うまいつまみをご存じですか?

なぎら 飲み屋の出し物ですが、コロッケのタネにそばを入れたそばコロッケや、そばを揚げて、あんの代わりにカレーをかけた料理があるんですが、どちらもうまい。そばを使ったメニューではないですが、豆腐を温めて、それに具を増やしたカレーそばのカレーをかけ、三つ葉を散らす。これもうまいですよ。

― 落語ではそばは噛まずにのむ、なんて言ったりしますが。

なぎら やはりやせ我慢しないで、噛まないと味わうことはできませんよ(笑)。

― おそば屋さんへ、何か注文があったらお聞かせください。

なぎら 組織に入ると、お店独自の物をつくらなくなってしまうことがある。チェーン店のように、皆同じメニュー、同じ味、同じ値段になる。ぼくの注文は「自分の店独自のメニューをつくってほしい」ということ。また、率直に「うまい」「まずい」と言える店がいいですね。

― そばの料金などについては?

なぎら そばは、庶民がちょっとお腹が空いたときに食べる物です。高級も結構ですが、いやな言葉だけど「たかがそば」だということを大事にしてほしいですね。

(‘06年7月12日・東京目黒区鷹番にてインタビュー/取材協力:ブルックス・コミュニケーション)
撮影/ STUDIO MAX 高橋昌嗣




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