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子どものころ、だしの味をうまいと感じました。― 麺類がお好きだと伺いましたが、汁とめんとどちらを重視されますか? なぎら どちらも大事ですが、強いて言えばめんを重視します。汁がうまくてもめんがダメ、というのは受け付けられない。 ― 汁は甘い方が好きですか、それとも辛い方ですか? なぎら 甘いというのは甘味の甘さですか? 辛いというのは塩辛さとは違いますよね。関東風、関西風でいえば、やはり辛い関東風、江戸前の味が好きなのかなあ。 ― 関西のめんはあまり好みに合いませんか? なぎら まず、汁の色が私の好みに合いません。東京は汁の色が真っ黒じゃないかと関西の人は言いますが、だしはちゃんと出ている。 ― 冷たいそばは関西より関東の方がいいように思いますが、温かいそばは関西にもおいしい店がある。地方のそばはどうですか? なぎら 金沢へ行った時に入った店のそばが、とてもおいしかったので、どこで修業をされたのかと聞いたら、「東京で」と言われて納得したことがあります。 ― 地方の場合、めんが良くても汁がダメ、ということもありますね。 なぎら 村おこしで「ここはそば屋が何軒ある」と言われ、その場でそばを打っていただいたことがある。しかし、そばはすごく良くても、汁がどうもいまいち。 ― そば屋では何を食べますか? なぎら その時の気分でいろいろ食べますよ。でも、一杯やった後なら締めにもりですね。以前二年間ずっと、自宅でも朝食にそばを食べ続けたことがあるんです。いろんなのを買ってきて試しました。さすがに飽きましたね。 ― そば好きになった主な理由は何でしょうか? なぎら 近所のおじさんが着流しでそば屋に入って「冷やで一本ちょうだい」と言って板わさなどをつまみ、ちびちびやる。天抜きなどあればそれを取って、そばを一枚たぐってさっと帰る。子どものころ、そういうのを見ていてすごく憧れましたね。 ― 最初にそばを食べた時、味はいかがでしたか? なぎら 五〜六歳のころにそば屋に入ったとき、そばのだしの味が本当にうまいと感じたんです。ただ子どもなので、そば全部をたぐり寄せて汁につけられない。そばって食べにくいものだなと思った。その時テレビ画面にダークダックスが出ていたのを憶えています。それがそばの最初の記憶です。 ― 私は、普通のそば屋さんのほっとする雰囲気が好きなんですが。 なぎら ぼくも好きですね。ただ、そばをひとすくいするとなくなっちゃうお店は、ちょっと……。そばは庶民の食べ物なのに。そういう店は値段も高い。それから、こだわってつくるのはいいけれど、どの店に行っても同じ味というのは、面白くない。 お店独自のメニューをつくってほしいですね。
― めんは太い方が好きですか、細い方ですか。 なぎら 細い方が汁が絡むから好きですね。太くてあまり何度も噛むというのじゃだめです。そばがきじゃないんだから。でもあまり細すぎるのもいけない。 ― 立ち食いそばはいかがですか? なぎら テレビで立ち食いそばの特集したことがあるけど、あなどれない店がありますね。歌舞伎座の横にある店はいいですよ。劇場の中にある店と同じ系列ですが値段が違う。 ― 立ち食いそばは、いま大変な勢いで増えていますから、競争も激しい。 なぎら テレビの取材が入ると張り切るせいか、そのときは、とてもおいしい(笑) ― お酒はいかがですか? なぎら そば屋はやはり日本酒ですね。暑いときはビールから始めることもありますが。つまみがうまくて、好きなお店は東京の江東区森下にある「京金」。つまみを食べて、最後にそばで締める。 ― そば屋の悩みは夜なんです。うまいつまみをご存じですか? なぎら 飲み屋の出し物ですが、コロッケのタネにそばを入れたそばコロッケや、そばを揚げて、あんの代わりにカレーをかけた料理があるんですが、どちらもうまい。そばを使ったメニューではないですが、豆腐を温めて、それに具を増やしたカレーそばのカレーをかけ、三つ葉を散らす。これもうまいですよ。 ― 落語ではそばは噛まずにのむ、なんて言ったりしますが。 なぎら やはりやせ我慢しないで、噛まないと味わうことはできませんよ(笑)。 ― おそば屋さんへ、何か注文があったらお聞かせください。 なぎら 組織に入ると、お店独自の物をつくらなくなってしまうことがある。チェーン店のように、皆同じメニュー、同じ味、同じ値段になる。ぼくの注文は「自分の店独自のメニューをつくってほしい」ということ。また、率直に「うまい」「まずい」と言える店がいいですね。 ― そばの料金などについては? なぎら そばは、庶民がちょっとお腹が空いたときに食べる物です。高級も結構ですが、いやな言葉だけど「たかがそば」だということを大事にしてほしいですね。 (‘06年7月12日・東京目黒区鷹番にてインタビュー/取材協力:ブルックス・コミュニケーション) |
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