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読んだそばから…


落語『吉野狐』より “あんかけ”


イラスト 島三郎という時計屋の若旦那が、店の金を使い込み、家へ帰れず身投げをしようとするところを夜鳴きうどん屋の安平に助けられた。安平と女房のまきは、彼を養子にして面倒をみる。ある日、きれいな女性がやってきて「私は島さんと末を誓った吉野と申します」と名のる。そこで一緒にして、三年たったころ、吉野がじつはキツネの変身であることが知れる……。

落語は「吉野が信田にかわった」というサゲ(落ち)になるが、“吉野”と“信田”という麺類店特有の隠語(符丁・隠し言葉)がわからないとサゲがわからない。そこで、隠語の説明を話の前や途中にそれとなく入れるという工夫もされている。吉野の持参金で店を構えなさいとすすめてくれた家主さんの会話がそれ。

『「売る物がうどん、そばにきつねなんば、こんな物では駄目や。……内店を出すと、かやく物が売れる。そのかやく物がみな家の人でできているのがおかしいな。しっぽくのことをキヤという、お前とこの苗字(みょうじ)が木谷じゃ。キヤのあんかけがアンペイで安平と書き、お前が安平じゃ。小田巻のことをマキといって嫁さんがまきさん。そばのことをシマというが息子さんが島さんや。あんかけのことをヨシノという、こんど来た嫁さんが吉野さん。それから今いうたきつねなんば、きつねのことを信田という。……」』

あんかけをヨシノといったのは上等の葛(くず)粉で知られる吉野葛(奈良吉野産の葛粉)からの由来で、おもに関西方面で使われていた。
使い慣れれば便利な隠語だが、初心者にとっては不便極まりない。遊女から花番に転身した吉野さんも「キヤ一膳、ちょっとまっとくなはれ、間違えました、小田巻というたらマキだんな、キヤがマキにかわって……」と、さかんに間違いを訂正していた。


 

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