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読んだそばから…


第1回 落語 『時そば』より“しっぽく”

イラスト

『「いくらだい?」「十六文でございます」「銭がこまけえから、まちげえるといけねえな。勘定してやろう。手ぇ出しな。一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、いま何時でぇ」「九つで」「十、十一、十二……」』

勘定の途中で時刻をたずねて支払をごまかすという巧妙な手口をちょっと間の抜けた男がまねて失敗するという、おなじみの落語だ。

『「なにができるんだい?花巻にしっぽく?しっぽく一つこしらえてくんねぇ。寒いなあ」』

しっぽくは「卓袱」と書く。卓はテーブル、袱はテーブルクロスの意で、もともとは中国風の食s卓を指す。長崎の郷土料理となっている卓袱料理は、江戸時代、中国から伝来した総菜料理が日本風にアレンジされたもの。

その料理の中に大盤に盛ったうどんの上にさまざまな具をのせたものがあり、これを江戸のそば店がまねて太平椀(塗り物の大椀)に盛り、“しっぽくそば”と称して売り出した。そば・うどん台に竹輪・鶏肉・干瓢(かんぴょう)・椎茸(しいたけ)・麩(ふ)などをのせた種もので、寛延(一七四八〜五一)の頃の出現といわれ、大いにもてはやされた。しかし、具の並べ方のユニークさで売った“おかめ”が江戸でデビューすると人気がとってかわられ、次第に衰退していった。

『時そば』の“しっぽく”は屋台売りのためか、具は竹輪や麩が登場するだけ。具だくさんが身上にしては、なんとも貧相な“しっぽく”だが、一文をごまかすために竹輪の厚みなどをほめちぎる、客の努力がいじらしい。

そばの値段というと『十六文』が固有名詞のように浸透していて、落語の世界でもそれを用いているが、幕末に著された『守貞漫稿』には、そば十六文、しっぽく二十四文とある。ちなみに、天ぷらは三十二文、鴨南蛮は三十六文だった。ほんの少しだけリッチな気分にひたれる一品だったのだろう。

 

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