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お宝拝見


築113年の建物
 ●所蔵/本家つる(滋賀県大津市)



築113年の建物

 
江戸の町屋を伝えて
 
比叡山のふもと、京阪「坂本駅」の近く、どっしりした木造二階建が建っている。『本家つる』である。二五〇年続くそば屋だが、建物は一八八七年の建築、一一三年がたっている。
もはや見かけることの少ない入り母屋造り。二階には折り鶴の形にくりぬいた手すりがあり、お寺や神社に囲まれた中でここだけがにぎわいをみせたのかと思わせる豪華な印象である。この建物は文化庁から「登録有形文化財」に指定されており、登録番号は、「第二五−〇〇〇七」。江戸時代の町屋を受け継いでいる建築として保存すべきものになっている。
主人の上延安正さんは八代目。上は広い座敷になっており、六、七〇人の宴会も可能。一階は椅子席。午前八時には店に出て、上延さんが率先してそばを打つ。以前は昼がそば、夜がうなぎ、川魚の料理で、そば屋というより料亭だったが、いまはそば一筋。手打にこだわっている。
一〇〇年以上もたつといくら堅牢な建物でも傷みが出てくるだろうが、修繕するときも、文化庁の了解が必要。もっとも傷むのは屋根の下の板らしい。縁はがっしりしていて、いまもお客さんが歩くがびくともしないという。「座敷に大勢のお客さんがみえたときは、(大丈夫かと)気がもめます」とのこと。
少しずつ手直しして、いつまでも使いたいのが八代目の考えで、そばと同じように建物も守りつづける覚悟でいる。
上延さんを仕込んだのは祖父の八郎さん。明治のころ、当時の東宮殿下(大正天皇)が軍の演習にこられて、「つる」のそばを食べられ、「おいしい」と喜ばれた。以来、宮家で評判になり、一二月になると八郎さんは麺棒を持って上京、高松宮家、秩父宮家などでそばを打った。宮内庁にも献上したが、恐らく昭和天皇も召し上がられたことだろう。おじいさんは八九歳で亡くなったが、孫の安正さんをつれて晴の姿を見せたものだという。東宮殿下お買い上げの栄誉は、玄関の上に掲額してある。
 
※この記事は「めん」2000年4月号に掲載されたものを転載しました。タイトルおよび本文で“築113年”となっている箇所は、2001年11月現在“築114年”になっています。



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