《連載》虎視眈々 片山虎之助の眼

日本麺類業団体連合会が発行する冊子『麺』の随筆です。

斬新なメニューが
店の個性になる


第五十九回 片山虎之介

町を歩けば、ハンバーガーショップや回転ずし、フライドチキン、ドーナツ、牛丼、カレライスなど、様々な種類のファストフード店が軒を連ねている。

 

加えて、コンビニエンスストアの数も凄い。激戦区では、ライバル同士のコンビニが、道路を挟んで睨み合っていたりする。

 

さらにコーヒーのチェーン店も、スイーツやサンドイッチなどを販売し、若い人たちに人気の休息の場になっている。

 

彩りも華やかな看板をかかげた、それらの店の群れの中に、落ち着いたたたずまいの蕎麦やうどんの店は、埋没してしまいそうで心配になってくる。

 

しかし、大阪に本店を構える老舗『美々卯』は、そんな状況でも、一歩も引かない。高層ビルの間に、歴史ある日本家屋が、時間が流れることを拒否するかのように立ち続ける様は潔ささえ感じられ、思わず「がんばれっ…!」と応援したくなってくる。

 

『美々卯』は、大正14年に創業した、そばとうどんの店だ。 現在、大阪を始め、京都、東京、名古屋などに、23の店舗を展開している。

 

相談役の薩摩卯一さんに、『美々卯』が元気な理由について、お聞きした。

 「創業者である私の父は、非常に蕎麦にこだわっておりまして、創業当初から自家製粉をしておりました。玄蕎麦は、出雲ら取り寄せていたようです。鰹節も小さな機械を使って、昭和のはじめに自分の家で削っておりました。香りや味がきちんとしていて、自分でほんとうに美味しいと思えるものを、お客さんにも召し上がっていただきたいという気持ちの強い人でした。今も受け継がれている、そうした考え方が、店の活力になっているのかもしれません」

 ここ以外、どこにもない、オリジナリティーあふれる商品を売りたいという気持ちが強く、この店の名物である「うどんすき」や「うずらそば」は、そういう発想から生まれたメニューのひとつだという。

 そのほかにも、『美々卯』には、他の店にはない、独自のメニューがいくつもある。それらが店の顔となり、客は「ここにしかない、この味」を楽しむために、『美々卯』に足を運ぶ。

 メニューの個性が、店の個性となり、『美々卯』という名前を大きなブランドに育てたと言うことができるかもしれない。

 大阪は、うどんの文化圏と思う人が多いが、蕎麦も、もともとは、江戸に先行して、大阪にあったものと考えられている。それが江戸の町に受け入れられ、いつの間にか、江戸を代表する食べ物へと成長していったのだ。

薩摩卯一さんは言う。

 「大阪は、江戸の蕎麦屋『砂場』が生まれた町です。江戸の『藪蕎麦』も、その『砂場』から生まれた暖簾です。いわば大阪には、日本の蕎麦の老舗暖簾の根っこがあると言ってもいいと思います。この町で、蕎麦を益々、愛される商品にして、蕎麦好きのお客さまを、ひとりでも多く増やしたいと思っています」

 『美々卯』の、人気商品のいくつかを、ご紹介しよう。

 ご自身のお店のメニューに、個性を付与するための参考にしていただければ幸いである。



美々卯 本店
大阪府大阪市中央区平野町4─6─18
電話 06─6231─5770

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