《連載》虎視眈々 片山虎之助の眼

日本麺類業団体連合会が発行する冊子『麺』の随筆です。

醤油の味を生かした個性のラーメンに行列


第五十五回 片山虎之介

気鋭の店が次々に登場し、常識を打ち破っていくラーメンの世界に、また新しい味の旗手が登場した。

JR山手線、巣鴨駅近くに暖簾をかかげる『Japanese Soba Noodles 蔦』だ。

主人、大西祐貴さんは35歳。2年前に創業した店を、この若さで繁盛店に仕上げた。連日、近所の店から苦情が出るほどの行列ができる。

店のラーメンの特徴をたずねると、大西さんは次のように答 えた。

 「ラーメンは、日本の誇る日本食のひとつだと思います。屋号の『Japanese Soba Noodles蔦』も、そういう気持ちを表したものです。日本特有の麺料理 として重視したのは、スープに使う醤油の味です」

多くの日本人が、子供のころから親しんだ醤油。このおいしさを引き出すために、大西さんは各地から30 種類もの醤油を取り寄せ、様々な組み合わせを試みた。

その結果、選んだのは、和歌山県の小さな蔵元の製品だった。蔵元の主人と交渉して、『Japanese Soba Noodles 蔦』のための特製醤油を作ってもらったという。これをメインに、他の数種類の醤油を加えてスープのベースにする。

この蔵元の製品を選んだ理由は、味に深みとコクがあったからだ。丸大豆を原料にした醤油で、杉樽で2年寝かせたものを、搾りたての生揚げの状態で送ってもらう。

  18リットルの醤油が、一週間に一本ぐらいのペースで届けられる。

ちなみに、これにブレンドする「他の数種類の醤油」とは、長野県産の杉樽2年熟成醤油。茨城県産の木樽1年熟成、生揚げ醤油。愛知県産の杉樽3年熟成、たまり醤油。これらをブレンドして使ったのが、店で最も注文の多い看板メニュー、「醤油そば」だ。

選び抜いた醤油は、日本の味だが、大西さんは、そこからさらに大胆な冒険を試みた。

イタリア産の高級トリュフオイルを合わせるなど、世界の様々な食材を、トッピングや調味料として組み合わせたのだ。

「トリュフの味は、最初は醤油とは合いませんでした。しかし、どうしても、この味を生かしたかったのです。出汁を工夫し、醤油の力を加減して、両方の魅力が調和する味に仕上げま した」

自分だけの個性が表現できる、自由闊達なラーメン作りをしたかったと、大西さんは言う。

 基本は醤油味のラーメンだが、バリエーションとして、塩味もある。

調味料やトッピングは、実に多彩で、パクチーやレモングラス、オリーブの実、柚子もあれば、トムヤンクンのような辛い味もある。

出汁も工夫され、一羽丸ごとの鶏を味のメインに据え、豚足、生のアサリ、椎茸、マッシュルーム、昆布、りんごなどを使う。動物性の脂肪は、できるだけ抑えている。

食べると、さっぱりした食味で、醤油の豊かな風味が強く印 象に残る。

麺は自家製麺。材料は、北海道産の強力粉、栃木産の中力粉に、長野県産の石臼挽き全粒粉をブレンドする。すべて国内産の小麦粉だ。

 「お客様の口に入るものですから、手間を惜しまず、できるだけ自分たちで作りたいと思うのです」と、大西さんは語る。その味を求めて、今日も店の前に、長い行列ができる。



Japanese Soba Noodles 蔦
東京都豊島区巣鴨1─14─1
電話 03─3943─1007

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