《連載》虎視眈々 片山虎之助の眼

日本麺類業団体連合会が発行する冊子『麺』の随筆です。

味とサービスと宣伝
すべてそろって人気1


第三十六回 片山虎之介

つけ麺の店『道』は、「食べログ」のランキングで、2月5日現在、人気1の位置にいる。
いったい、どういう理由で、この店は1位に上り詰めたのだろう。それが知りたくて、朝早く、開店前の『道』を訪ねた。

店主の長濱洸也さんが、笑顔で迎えてくれた。この店の魅力について、長濱さんは、次のように言う。
「味も大切ですけれど、いちばん気をつけていることは、お客さんに、どうしたら満足してもらえるかということですね。店を清潔にして、挨拶をきちんとして、いらっしゃいませも、はいという返事も、ありがとうございましたも、お客さんの目を見て、心を込めて言うことが大切だと思っています」

それらのことも含めて、「店の味」だと、長濱さんは語る。

『道』で供する食数は、一日150食に限っている。毎朝、その数だけ作って、売り切れたらおしまい。毎日、ほぼ完売するという。

麺のメニューは3種類。基本が「素つけ麺」、それにトッピングが付いた「つけ麺」、さらにトッピングが豪華になった「特製つけ麺」だ。最も売れるのは、中間の「つけ麺」だという。

その「つけ麺」を、いただいてみた。

運ばれてきたのは、見事に太い、つけ麺だ。一見、うどんと見まごうばかり。量もたっぷりで、食べ出がありそうだ。

まず、この個性的な麺だけを食べてみる。

見た目そのままの、うどんのような食感だ。柔らかい口あたりだが、コシはしっかりしていて、噛むと、適度なもちもち感がある。それでいて、べたつかずに、すっぱり切れる歯切れが心地良い。

次に、つゆを付けて食べてみる。

 とろりと濃厚で、極太の麺に良くからむつゆだ。長濱さんに、つゆの味付けを尋ねると、「味付けは醤油です。味噌や胡麻は使っていません。甘味に三温糖を入れています。ダシはとんこつが基本で、鶏も使います。そのほかに魚系のダシですね、さば節、かつお節、煮干しなどを合わせて使っています」

口の中で太い麺が踊る。麺の味の優しさに、濃厚なつゆの味の強さが混ざり合い、複雑で刺激の強い味わいが生まれる。たっぷりしたスープに沈んだラーメンにはない、つけ麺ならではの味の世界だ。

たぶん、この店の魅力の原点は、小麦粉の選択から製法まで工夫を重ねたという、この太い麺の味と食感にあるのだろう。

味が良くて、サービスが良くて、さらにもうひとつ。『道』が繁盛した秘密はマスコミに取り上げられたことにあると、長濱さんは言う。

2009年にオープンして、半年ぐらいの間は、客も少なく、赤字続きで店を閉めることも考えたという。それでも頑張って続けているうちに、ふとしたことから雑誌に取り上げられるようになり、テレビにも取り上げられて、番組の中のランキングで1位の評価を得た。

テレビの放送が終わった直後から、店の前には行列ができたという。

お客に来てもらうためには、料理がおいしいのは、いわば当たり前のこと。それに加えて、この店の料理はおいしいのだと、多くの人に知ってもらうことが、どうしても必要なのです
と、長濱さんは語る。



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電話 03-3605-8578

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