《連載》虎視眈々 片山虎之助の眼

日本麺類業団体連合会が発行する冊子『麺』の随筆です。

女性目線で作った
女性スタッフだけの店


第三十一回 片山虎之介

小田急とJRのふたつの駅が寄り添うように並ぶ東京・町田市の駅近くに、『らぁ麺 胡心房』がある。

ここは、女性のスタッフだけで運営されている店。主人の野津理恵さんは、女性スタッフに限定した理由を次のように語る。

「ほかのラーメン屋さんにはないけれども、うちの店にあったらお客さんが、ちょっと微笑んでくれるような、笑顔、気遣い、目配りのようなものが欲しかったんです。それをできるのは女性。もちろん笑顔のすてきな男性もいますが、女性のほうが、何かあったときに反応が早いのです」

たとえば妊娠した女性や、子供連れの客、あるいは車椅子の客が来たときなど、マニュアルなどないのだが、スタッフはドアを開けに行くという。そういう対応は女性のほうが絶対に早いと、野津さんは断言する。

「これからの飲食業は、単におなかをいっぱいにするだけではなくて、ほかに、お客様に満足を感じていただける要素が何か必要だと考えています。食べることを、ほんとうにお客様に喜んでいただいて、満足していただいて、また来ていただくためには、味がおいしいということだけでは足りないと思うのです」

女性目線で見た、接客、店の雰囲気、メニュー作り。これらの工夫を積み重ねた結果、現在『らぁ麺胡心房』の客は、4割以上が女性だという。しかもリピーターが多い。それは、野津さんの思いが、客に届いているということなのだ。

店で一番人気のメニューは、表紙に紹介した「味玉らぁめん」。オリジナルの麺やチャーシューと、半熟玉子の組み合わせが好評だ。

「麺は特注で、国産小麦を石臼挽きした全粒粉を使っています。こうすることによって、小麦粉の風味、甘味、旨味をしっかり楽しめるラーメンになりました」

一見、何の変哲も無いとんこつラーメンに見えるが、この一杯には野津さんの思いが詰め込まれている。

その作り方は、次のようなものだ。

「今日、お客様に召し上がっていただくのは、昨日作ったスープなんです。12時間ぐらい煮込んだスープを、ガラをこして冷却して、一晩、低温熟成させます。それは素材の味に、まとまりを持たせるのが、ひとつの目的です。もうひとつの目的は、脂を少なくすることです。熟成したスープは冷却されているので、脂が表層に固まっています。底部にはゼラチン質がプリンのように固まっています。その、上に浮いている脂を、一度、ぜんぶ取り除いてしまいます。それをまた必要なだけ、ラーメンのスープの中に戻すのです」

こうすることにより、豚のゼラチン質はたっぷり入って旨味は豊かだが、脂の少ない、クリーミーでマイルドなスープになる。脂っこさや、とんこつ独特のにおいが希薄な、食べやすいラーメンができるのだ。

 「とんこつが苦手な方や、今まであまりラーメンを食べなかった方は、それなりの理由があったと思うのです。そういう方々にも、お子さんにも、お年寄りにも、勿論女性にも、安心して召し上がっていただけるラーメンを作るのが目標なのです」

脂を必要以上に入れなければ、カロリー量も抑えることができ、健康に配慮したラーメンになる。

こういう、女性らしい細やかな心配りが、健康を気にする客たちの共感を呼んでいるのだ。


らぁ麺 胡心房
東京都町田市原町田4─1─1  太陽ビル1F
電話042─727─8439

トップページへ トップページへ