《連載》虎視眈々 片山虎之助の眼

日本麺類業団体連合会が発行する冊子『麺』の随筆です。

看板メニューの種物を創案する

第十一回 片山虎之介

東京近郊に住む私の家の近くに、新しいイタリアンのレストランが開店した。店の前を通ると連日満員なので、先日、料理を味わってみた。

これが美味しい。しかも「こんな値段で、こんなにボリュームのある料理をいただいてもいいんですか」というくらい安いのだ。

小さな店は若い夫婦が、ふたりで切り盛りしていて、活気にあふれている。聞けば主人はイタリアで修行し、さらに都内のレストランでも修行を積んできたとのこと。ピザを焼く窯も本格的なものを設置し、一流店にひけを取らない料理を、きちんと供していた。こういう実力のある店が、今は大都市に限らず、地方にも次第に増えてきている。

今や蕎麦屋さん、うどん屋さんは、イタリアンやフレンチの店と競い合う時代だ。「今日は、蕎麦かうどんを食べようか。いやまてよ、フレンチのランチもいいな。イタリアンのピザも美味しいし…」と迷う客を、「やっぱり麺がいいな」と、引っ張らなくてはいけない。世界一の美食大国ともいわれる現代の日本。料理の歴史の中でも、いまだかつてなかった時代に突入しているといえる。

では蕎麦屋さん、うどん屋さんは、新しい時代に、どう対応していけばいいのか。その方法はどこの店も同じというわけではないだろう。地域により、またお店により、客の好みはそれぞれなので、自分の店に通ってくれる客に喜んでもらえるような店にしていく必要がある。あるいは、「こういう客に来てもらいたい」という希望があるなら、その客が関心をもってくれるようなスタイルを取り入れる必要があるだろう。

設備投資はできるだけ少なくして、今ある手持ちの売り物を活用することで効果をあげたい。そのひとつの手段として有効なのは、魅力的なメニューを作ることだ。

料理の魅力は、美味しさ、雰囲気、値段の安さ、店主の人柄、店の立地条件など、いろいろあるが、まず第一に大切なのは、美味しさだろう。美味しいメニューを作ること、これは経営上の大きな戦力になる。

蕎麦が庶民の食べ物であった時代は、終わりつつある。富裕層の客も、美味しい蕎麦なら食べたいし、手をかけた良質の蕎麦は高級料理という認識が、すでに定着し始めている。

日本各地には、土地の郷土蕎麦を生かしたり、あるいは地元の食材を利用するなど、様々に工夫して、人気の種物を品書きに載せている店がある。これらのメニューは、店によっては一番の看板商品になり、売り上げの柱になっているところもある。

もり蕎麦、かけ蕎麦を大切にすることは、もちろん基本だが、それだけでは競合する料理店に対抗することは難しい。特に寒い時期は、蕎麦の温かさも魅力のひとつになるので、種物の充実は店に客を呼ぶ効果が期待できる。

どこにもない、この店に来なければ食べられない、おいしい種物。この「おいしい」というところがポイントだが、これができればイタリアンのランチの張り紙を素通りして客に足を運んでもらう、大きな力になることだろう。

日本各地で人気を呼んでいるメニューをいくつかご紹介したい。これらを参考に、ご自分のお店ならではの魅力的なメニューを考案していただきたい。



天笑
大阪府枚方市岡南町10-30  TEL:072-846-7166

なにわ翁
大阪市北区西天満4-1-18(老松通り)  TEL:06-6361-5457

桐屋・権現亭
福島県会津若松市上町2-34  TEL:0242-25-3851

かね井
京都市北区紫野東藤ノ森町11-1  TEL:075-441-8283

松郷庵 甚五郎
埼玉県所沢市松郷272-2  TEL:04-2944-9168

蕎楽亭
東京都新宿区神楽坂3-6神楽会館1階  TEL:03-3269-3233

藪半
小樽市稲穂2-19-14静屋通り  TEL:0134-33-1212

巴町砂場
東京都港区虎ノ門3-11-13 SVAXビル  TEL:03-3431-1220

出雲蕎麦 いづ味
東京都港区六本木1-6-1泉ガーデンタワー1階  TEL:03-3582-2810

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