《連載》虎視眈々 片山虎之助の眼

日本麺類業団体連合会が発行する冊子『麺』の随筆です。

鮎ラーメンは女性にも人気

第六回 片山虎之介

岐阜市の料理店『川原町 泉屋』には、なかなか他所では見られない「鮎ラーメン」(表紙写真)がある。これが旨いと評判がいい。

5 代目当主の泉善七さん。斬新な鮎料理を工夫している。

『川原町 泉屋』5代目当主、泉 善七さんは、「鮎ラーメン」を発想した経緯を次のように言う。

「コース料理の締めに、鮎を使った麺類を出したいと思ったのです。鮎との組み合わせで麺というと、普通、思いつくのは蕎麦でしょう。でも、蕎麦と鮎というと甘露煮のイメージが強いですし、当たり前すぎて面白くなかった。それでラーメンにしました。鮎を使ったラーメンと聞いても、どんな味なのか、ちょっと想像がつきませんよね。皆さん、一瞬、考えます。そういう、ほかには例のない料理が出したかったんです」

麺は、同じ岐阜県、飛騨高山の縮れ麺を使った。味付けは鮎の味を邪魔しない程度の薄味にした。昨今流行の脂っこいラーメンとは対極の味だ。だから、とんこつラーメンは苦手だという年配の女性も、「これは美味しい」といって、残さず食べるという。

『川原町 泉屋』は明治20 年の創業。当初は岐阜特産の鮎の加工品などを取り扱っていた。平成17 年に当主の泉善七さんが料理店を開いた。

『川原町 泉屋』の料理は、一見、簡単そうに見えても、実はどのメニューも調理に手間がかかっている。

「鮎ラーメン」のスープは中華のシャンタンスープをベースに、鰹節と昆布の出汁を加えた。さらに鮎の脂も加えて味に深みを出した。鮎の骨はカメリアラードで揚げて、さくさくと食べられるようにしてある。

『川原町 泉屋』は明治20 年の創業。当初は岐阜特産の鮎の加工品などを取り扱っていた。平成17 年に当主の泉善七さんが料理店を開いた。

「天日干しした鮎の開きを、カリカリに焼き上げることがポイントです。頭の部分が、ぐにゃっとなったら台無し。そのため炭火の遠火で20分ほどかけて焼くのがコツです」

鮎は高級食材だ。特に天然鮎は、良質のものは入手することさえ難しい。『川原町 泉屋』ではそれを、独自のルートを開発して確保している。

鮎は岐阜県の名産品だ。長良川を始め、鮎を産する河川は多い。獲れる川により鮎の味は異なる。仕入れ値にも差があるという。

「一番旨いのは和良川の、お盆のころに獲れたものですね。郡上鮎も美味しいけれど、食べ比べてみると圧倒的に和良川の鮎のほうが旨い。和良川はダムがあるので、琵琶湖産の稚鮎を放流していますが、それが最もクォリティーが高いようです。良いコケが付く川で、ぽってり太った琵琶湖産の鮎が育ったものが美味しいですね」

岐阜県には鮎が獲れる有名な河川がいくつもある。それぞれ川ごとに、鮎の体型や味に特徴がある。

鮎が獲れる季節は決まっている。和良川の鮎の解禁は6月末。『川原町 泉屋』では、鮎がある程度の大きさに育つ夏に大量に仕入れ、品質を落とさないよう瞬間凍結させ、一年中出せるようにしている。凍結させる温度はマイナス30℃。5分で完全に凍らせる設備を導入している。

「冷凍した食材と聞くと、一般的には良くないイメージがありますが、冷凍にもいろいろあるのです。鮎に関しては、瞬間的に凍らせて冷凍しておくこの方法が、一番いい形だと思います」

歴史を振り返ると『川原町泉屋』のある付近は、ずっと長い間、長良川を船で運ぶ物流の基地だった。材木問屋と和紙問屋が軒を連ねていた一角。『川原町 泉屋』の店舗は、古い和紙問屋の建物を生かしたものだ。

泉さんは歴史ある町の特産品を現代の感覚で見直して、「鮎ラーメン」を始め、「鮎のパテ」とか「鮎のなれずし」など、オリジナリティーに富んだ様々な料理を創作している。

川原町 泉屋

岐阜県岐阜市元浜町20
058─263─6788

『川原町 泉屋』には鮎を使った多彩なメニューがある。左より「鮎のパテと なれずしのクリームパテ」、パンと良くあうまろやかな味だ。「焼き鮎の笹巻き寿し」は胡麻と紫蘇を混ぜた握りに焼き鮎を乗せた。「鮎のなれずし」は濃厚な旨味で、癖も少なく食べやすい。
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