第43回

大卒の学歴を捨てた親子2代
名湯の町で聞いた蕎麦屋人生

にっぽん蕎麦紀行 写真・文/旅行作家 富永政美

温泉とスキーの天国

 “草津よいとこ 一度はおいで お湯の中にも花が咲くよ”《上州民謡草津節》

はるか神代の昔から、天下の名湯とうたわれる群馬県草津温泉。
26カ所の源泉から湧き出す湯は毎分36000リットルと、日本一を誇る。
温泉街の真ん中に展ける「湯畑」(ゆばたけ)では、ここだけで毎分5000リットルが噴出し、もうもうと湯気を吹く湯は7本の木の樋(とい)を通して高さ5メートルの滝に落とし、温度を下げてから町内の各旅館に送られる。
強い酸性の湯は万病の薬と言われ、

 “お医者さまでも草津の湯でも、惚れた病いは治りゃせぬ”

と、「草津節」はその効能をシャレのめす。


標高1200メートルの草津は、夏は涼しく、秋は紅葉。そして冬はスキーの天国。
背後に迫る草津白根山の斜面では、標高2100メートルから標高差900メートルを一気に滑り下りる8キロメートルの豪快なダウンヒル・コースがスキーヤーたちの人気を呼ぶ。
そんな草津へ、同窓会の仲間と出掛けたのは数年前の秋。湯畑に近い『柏香亭』(はくほうてい)という店で食べた手打そばが素晴らしく旨かった。
昼どきは表にお客が長い列をつくるほどの繁盛ぶり。同行者もいたので、主人の話を聞けなかったのが心残りだった。
この1月、テレビを見ていると、「草津に待望の雪」と、ゲレンデを滑るスキーヤーの姿が映し出されている。
「冬の草津もいいな」と気を引かれた。そして、あの蕎麦を思い出した。
番号を調べ、『柏香亭』に電話を入れると、主人が出た。
「エ、『そばの散歩道』? ハイ、ウチも蕎麦屋ですから、ときどき見てますよ。取材に? 結構ですな、大歓迎…」と、えらく調子がよい。
「朝は9時半から蕎麦を打ち、開店は11時。蕎麦打ちは息子の仕事で、汁の担当は娘…。だから私は開店前が一番ヒマなんで、ハハハ」

温泉街の真ん中で蒸気を吹く湯畑

温泉街の真ん中で蒸気を吹く湯畑

湯畑では5メートルの滝を落として湯をさます

湯畑では5メートルの滝を
落として湯をさます

8キロメートルの豪快なダウンヒル

8キロメートルの豪快なダウンヒル


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