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第33回 
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名水が湧く越前の城下町で郷土の蕎麦に情熱を燃やす本店・支店主人の人間模様

にっぽん蕎麦紀行 写真・文/旅行作家 富永政美 space

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県をあげての蕎麦おこし運動
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福井県で蕎麦屋さんに入ると、先ず「越前おろしそば・ おもてなし膳」のポスターが目に入る。
名物「越前そば」を観光の目玉にしようと、福井県麺類組合が考えた統一メニューのキャンペーンである。
から−い大根オロシをたっぶりと添えて食べるのが「越前そば」の特長だ。その由来については、本シリーズ第 4回の〈武生市『うるしや』〉に詳しく書いているので、 ご参照頂きたい。
組合統一メニューの「おもてなし膳」は、大根オロシに 加えて、カニやカマボコなど福井の珍味を添え、さらに食器には組合特注の越前焼き陶器。お盆には越前塗りの 漆器を使うという気の入れようだ。
そんな業界の意欲に呼応して、福井県では平成15年、「県産そば使用店認証制度」を発足させた。認証の条件は「県産の粉を使い、蕎麦粉7割以上で打つ 手打そば」で、これに適合する店には県知事からの認定証が交付される。
農業関係者も蕎麦の増産に努め、県産そばの産額は3年間で約2倍に増えた。
福井県の主な蕎麦の産地は、県東部の大野盆地で、昔からタバコの間作(あいさく)として良質の蕎麦を栽培してきた。


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福井県麺類組合のキャンペーン・ポスター
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福井県麺類組合の
キャンペーン・ポスター

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福井県が交付する「県産そば使用店」認定証
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福井県が交付する
「県産そば使用店」認定証

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ショウズが湧く名水の町
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大野盆地の中心地は、人口4万の大野市。古い歴史をもつ美しい城下町である。
大野市は北陸道の福井インターから国道58号線を東へ約30キロメートル。この国道は昔の美濃街道で、その先の油坂峠を越えて美濃の国(岐阜県)に入り、名古屋で東海道と結ぶ越前から江戸への最短距離だった。
江戸幕府は交通の要衝として大野を重要視し、ここに譜代大名の土井氏を置いた。
4万石の小藩ながら、大野藩は頭脳的な施策で知られ、優雅で財力のある城下町を育て上げた。
市の中央に小高く聳えるのが亀山。その頂上に大野城の天守閣が見える。
山の下に車をとめ、長い坂道を登って頂上についた。天守閣は昭和43年の再建だが、最上階からの眺めがすばらしい。碁盤目の城下町が箱庭のように見えた。 山麓の市役所で観光資料をもらいながら、面白い話を聞いた。
「大野には無いものが二つ」。それが自慢だという。
その一つは上水道。市内の至る所で清水が湧くから水道は要らない。
もう一つは有料駐車場。広々とした市内には数多い公営駐車場があり、どこでも無料で駐車できる。
北陸では清水を「ショウズ」と読む。市役所のすぐ裏に市内最大の「御清水」(おしょうず)があると聞いて、行ってみた。
住宅地の中にコンコンと湧く泉。その上には古風な屋根がかけられていた。


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大野市の全景(大野城天守閣から)
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大野市の全景(大野城天守閣から)
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堅実な姿の大野城天守閣
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堅実な姿の大野城天守閣
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大野市内はどこでも無料駐車場
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大野市内はどこでも無料駐車場
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本店で結ばれた支店の恋女房
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その泉の横に「←名水そば」の看板が出ていた。矢印の方向を見ると、しもたや風の家に『福そば支店』の行灯(あんどん)があった。
時刻はちょうど11時。店の奥さんが玄関に「手打そば」の暖簾をかけるところだった。
店に入ると、正面に立派な額がかかっていた。「貴店を福井県産そば使用店に認定いたします」と書いて、知事さんの名前にデッカイ朱印がバッチリと押してある。これが噂に聞いた認定書だな。
厨房から顔を出した旦那に聞いた。
「支店と書いてあるけど、本店はどこにあるの?」
「中心街の五番通です。私は9年間、本店で働いて、昭和44年、ここに店を出しました」
中出信之さん。お年は60歳。名刺には大野麺類組合会長、福井県麺類組合副会長と2つの肩書がある。エライ人なんだ。
私の名刺を見て、「あゝ『そばの散歩道』なら、いつも見てますよ」と、嬉しいことを言ってくれる。
メニューに「御清水そば」というのがある。読み方はもちろん「オショーズそば」だ。笑顔がステキな奥さんに、それを頼んだ。
出てきた「御清水そば」は、なめこオロシ、野菜の天ぶら、山菜を載せた3種類の冷たい蕎麦に、もう一つ、熱い牛汁の蕎麦が、割子そば風に並んでいた。
蕎麦は見事な手打。色も香りも申し分ない。
奥さんの名は千枝子さん。本店の旦那のイトコで、中出さんが本店勤務中に結ばれた仲だという。
「本店にも行ってみたいな」と言うと、
「電話しておきます。私もあとで行きますよ」と言う。
「じゃ、2時ころ」と約束して、店を出た。

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しもたや風の『福そば支店』(大野市泉町)
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しもたや風の『福そば支店』
(大野市泉町)

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『福そば支店』の中出信之さん
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『福そば支店』の中出信之さんspace
『福そば支店』の「御清水そば」(1300円)
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『福そば支店』の「御清水そば」
(1300円)

space『福そば支店』の中出千枝子さん
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『福そば支店』の中出千枝子さん
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