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にっぽん蕎麦紀行
 


第14回 静岡県静岡市『安田屋』『河内庵』『岩久』
意外な蕎麦どころ… 静岡市の古い蕎麦屋探訪




◎伝統の蕎麦を守る『安田屋』

静岡市民景観賞を贈られた『安田屋』本店
静岡市民景観賞を贈られた
『安田屋』本店



「蕎麦の可能性を追求…」と語る安田貞男さん
「蕎麦の可能性を追求…」
と語る安田貞男さん


「静岡というと暖かい海岸を連想する人が多いが、すぐ後ろは長野・山梨につづく山岳地帯。そこは昔、蕎麦の名産地だったんです」と語るのは、静岡県麺類業組合の安田貞男理事長(77)である。「江戸で栄えた蕎麦も、原点は駿府(静岡)の蕎麦。大御所家康公と一緒に江戸入りしたんだから…」と力説する。

安田さんは静岡市横内町で古い暖簾をほこる『安田屋本店』の4代目である。店の前を通る県道静岡清水線は、江戸時代に清水港から駿府城へ米を運んだ運河の跡で、いまも道路の下の暗渠には川が流れている。安田さんのご先祖は代々が晒屋(さらしや)で、その川の流れで木綿を晒(さら)し、川筋に7軒あった紺屋に納めていたという。

蕎麦屋に転業したのは、あと1年で明治…という慶応3年(1867)のこと。以来137年間、『安田屋』は静岡そばの伝統を守りつづけてきた。「セガレの裕は慶応の経済を出たもんで、とても店は継ぐまいとあきらめていたが、やってくれると言ったときは、うれしかったな」と、安田さんは言う。




◎前人未踏の週替わり蕎麦に挑戦

平成6年3月、『安田屋本店』は隣家からの出火で全焼したが、その災難を乗り越え、安田さん父子は翌7年9月、全く新しい構想の店を竣工させた。新店舗は城下町の商家を見事に再現した蔵造り建築で、店につづく白壁の土蔵とともに「静岡市民景観賞」を受賞し、静岡市の観光名所ともなっている。

自慢のメニューは「駿河そば」。茶きり・サラシナ・あら挽きの3種の手打そばに、特産の桜エビのかき揚げを添えた、静岡らしさ満点の逸品だ。身長180cmを超える偉丈夫で「一間坊(いっけんぼう)」の異名をとる安田さんだが、包丁の動きは精密機械のような繊細さで、3種類の蕎麦を絹糸のような美しさで打ち分ける。





観光客に人気の「駿河そば」
観光客に人気の「駿河そば」


『安田屋』自慢の変わり蕎麦(青ねぎ切り)
『安田屋』自慢の変わり蕎麦
(青ねぎ切り)


昨年、安田さんは「卓越技能賞」を労働大臣から贈られた。蕎麦業界では初めてという。それを機に、安田さんは前人未踏の壮挙に挑戦する決心をした。毎週新しい「変わり蕎麦」を作り出すという企画である。変わり蕎麦…とは、色と香りと季節感を楽しむため、蕎麦粉以外のものを打ち込む蕎麦をいう。茶切り・ゆず切り・けし切り・卵(らん)切り…などが一般的だが、安田さんは週替わりで、新しい品目を生み出していこうというわけだ。

これまでに創作した「変わり蕎麦は」、野菜を切り込んだものでは、ウド切り・ショウガ切り・人参切り…。魚なら鯛切り・鮎切り・鰹切り…。果物ではリンゴ切り・さくらんぼ切り・柿切り…などなど、平成12年8月で50品目を超えた。季節感と旬の香りを生かすのが、変わり蕎麦のダイゴ味だ。8月下旬に訪れたときは、静岡特産の青ネギを打ち込んだ緑の蕎麦が、幻想的な美しさだった。

「中には珍そばもあるが、蕎麦の無限の可能性を追求してみようと、セガレと二人でガンばってますよ」と、安田さんは喜寿(77歳)とは思えぬ若々しい笑顔を見せた。『安田屋』には横内町の本店のほか、駅前の紺屋町名店地下街に支店の『大御所』があり、ここでも「駿河そば」が観光客の人気を呼んでいる。



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