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ラーメンスープぶっかけ飯発酵学者・文筆家 小泉武夫
茶漬けとか湯漬けとかではなく、調味された汁(スープ、めんつゆ、だしなど)を飯にぶっかける食い方は、誠にもって爽快で、簡単で、そのうえ大層美味しいので時々賞味している。 汁かけ飯の類(たぐい)は日本以外にもあって、例えば中国には、わざわざ焦がした飯に美味しいスープをかけて食べる有名な料理があった。この日本にもとりわけうまいのがあって、なかでも我が輩が大好物にするのはラーメンのスープを飯にぶっかけて食うものである。 九州に行くと、ラーメンに飯が付いてくるところが多く、ひと昔前に福岡でそのうまさを覚えてからは、豚骨ラーメンであろうが、味噌や醤油ラーメンであろうが、まず麺を平らげた後、スープに飯をぶっ込んで、それを再びじっくりと味わう、「2度楽しみ」をしている。 つい先日も、行きつけのラーメン屋に入り、醤油ラーメンとご飯を注文した。この店を選んでいるのは、スープが幾分濃いめなので、それに飯を入れると大層合うからである。いつものようにシコシコ麺を美味しくすすり上げ、丼に残ったスープにご飯茶碗一杯ほどの飯を入れてさっとかき混ぜてから、中華料理用の匙(さじ)[=湯匙]で飯をすくい上げて食べた。 それを口に入れて麺みだすと、飯からすぐに耽美(たんび)なほど上品な甘みがチュルルルと出てきて、それがスープの濃厚なうまみと一体化して、そのうまさに唾液までもがピュルピュルとではじめる始末である。そしてそこに、多めに振りかけた白胡椒のピリ辛が押し寄せてくるものだから、食の欲は一層亢(たか)ぶるばかりである。こうして飯もスープもすっかりと平らげ、気づいたら丼の底には一粒も一滴も残らぬ具合であった。 ラーメンスープのぶっかけ飯は、味噌ラーメンのスープに飯を入れて味わうのがとりわけ美味しい。味噌ラーメンは濁り汁であるので、味はかなり濃厚なうえにコクやうまみが強いから、そこに入った飯は、どっぷりとそれらに塗(まぶ)されて、別もののように変身する。それをよく味わうと、飯の一粒一粒が味噌のコクみと、だしのうまみを吸っていて、それが飯の甘みと一体化して絶妙だ。そのうえ、多めに加えたニンニクからの匂いが鼻から囃(はや)したててくるものだから、さらに舌に馬力がかかるのである。とにかく、ラーメンのスープはラーメン職人がここを勝負どころと見て、全精力と技を込めるところである。ぶっ込んだ飯が不味いはずはない。 小泉 武夫(こいずみ たけお) イラスト/茂本ヒデキチ |
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